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「慧君は俺が好き?」
聞いたってウサギが素直に答えてくれないのはわかっている。どうせ好きじゃないって言って、でも耳まで真っ赤に染める。だからこう聞くのは俺のエゴで本当は返事なんか要らない。
「好きなんかじゃない」
想像通りの言葉が想像通りの反応で返ってきて頬が緩んだ。
けれど今日は誕生日。1年に1度の特別な日だから特別なことが起きるのかもしれない…というか起きた。
「好きの、好きの好きの……大好きのもっと上」
苦しいぐらいにしがみついて言うから曇ってしまった声。咄嗟のことに固まった俺の胸元で、モゾモゾと動いたウサギが身体を起こす。
真っ赤な顔で潤んだ目で、震える唇で紡がれる言葉は夢にみた現実だ。
「好きが止まらなくて…もうどうしていいかわかんない」
「慧…君?」
「俺、変なんだよ。好きだけじゃ満足できない。他のヤツがリカちゃんの話してるとイライラして、俺のだって言いたくなるのに言えなくて…もう止めらんないんだよ」
その気持ちを俺は知っている。
自分の重たすぎる感情に押しつぶされそうになって、どこにもぶつけられなくて抑えてきたからわかる。
好きだから苦しくて、好きだから傍にいたくて、好きだから自分だけのものにしたくなる。
けれど愛しているからこそ……
この人の為に何かしたいって思えるほど愛しているからこそ、自分で自分を締め付けて身動き出来なくなる。
やっと気持ちが追いついてくれたことが嬉しくて、思わず出た俺の笑顔は絶対に綺麗なんかじゃない。
きっと口元はだらしなく緩んでいるし、余裕なんてないぐらい感情は漏れまくっている。
でも、そんなの構ってられない。
「俺が慧君の全部、受け止めてあげるからおいで」
全部受け止めて全部埋めてあげたい。
思い悩んで不安になる心を俺でいっぱいにしてあげたい。こうやって身体を包み込んで安心させてあげたい。
君がくれたものを返したい。君の為に生きたい。
俺が慧へと向ける感情は、好きの、好きの好きの大好きの上の……そのずっと先にある。
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