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リカちゃん先生にご用心
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なんだか不思議な夢を見た。
小さなウサギが小さな檻の中で必死に耳を塞いでいる夢。
何かすげぇ嫌なことがあったのか、周りから目を背けてて誰とも話さない1人ぼっちのウサギの夢。
檻の外から誰かがそいつを呼ぶ。それは、みんなの憧れで誰よりも強くて、嫌味で自信家なライオンだった。
臆病者のウサギをライオンは言葉巧みに騙して外へ連れ出し、たくさんの世界を見せてくれた。
平凡に悩む馬さんに、明るく大きな声で歌ってバカにされる鳥。口下手で誤解されても強がる牛。そして、優しいけど実は怖がりな熊さん。
みんな何かに悩んで、迷っているのを見てウサギはライオンを褒めた。
「ライオンさんは強くて何でも出来てすごいね」
するとライオンは寂しそうに笑って答える。
「だって、そうじゃないと誰も俺を必要としてくれないから」
いつも余裕で、いつもみんなの前に立って、いつだって笑っている彼。
初めて見せる表情と震えた声で、彼がウサギに何かお願いをしたけれど、ウサギが答える前に目が覚めてしまった。
誰かが俺を呼ぶ声がして、薄っすらと目を開ける。僅かに開いた瞼の先で黒い影が揺れた。
「慧君ただいま」
帰ってきたリカちゃんが微笑む。
暗いリビング、寝転んだソファから見上げたリカちゃんは、夢の中のライオンにそっくりだ。
「なんか……夢、みてた」
独り言のように呟いた俺に、リカちゃんはジャケットを脱ぎながら返事をくれる。
「夢ってどんな?」
「たくさん動物がいて、その中心にリカちゃんがいる夢」
「なにそれ。俺ってば動物の王様なの?」
軽く笑ったリカちゃんが、脱いだスーツのジャケットをソファの背もたれに掛ける。その左薬指には銀の指輪が光っている。
そして、俺の指にも。
「リカちゃん」
俺が呼べばリカちゃんは必ず俺を見る。
ソファに膝立ちになって、リカちゃんの腰に抱きつく。リカちゃんの匂いと、お揃いの香水の匂いと少しだけ煙草の匂い。
これが俺の好きな匂い、好きな場所。
俺だけの…俺にしか許されない特等席。
黙ったまましがみつく俺の頭をリカちゃんが撫でる。
「こら。そんな所で寝ない」
「お前が帰ってくんの遅いからだろ。腹減ったんだから早く飯して」
「慧君。そんなに可愛い顔して生意気なこと言ってると、夕飯より先にお仕置きしちゃうよ」
答えるのが恥ずかしくて、リカちゃんの腹に顔を擦りつける。
「なぁ慧君。それって今すぐ抱いてって誘ってるように見えるんだけど」
顔はそのままに頷く。すると、髪にキスが落とされ、その唇が耳へと移動する。
偶然で始まったものが必然に変わったとしても、それは永遠ではない。明日も続くとは限らない。
けれど少なくとも俺は明日も明後日も、リカちゃんを探して呼んで、隣に走っていく。
リカちゃんと一緒にいる為に、リカちゃんに好きだと伝える為に生きる。
「慧、名前を呼んで」
耳元にあるリカちゃんの唇が、夢の中のライオンと同じお願いを告げた。夢で答え損なったウサギの代わりに、俺がそれを叶えてやる。
「リカちゃん」
リカちゃんは嬉しそうに口元を綻ばす。
そして、優しい声でありがとうと囁き、甘ったるい声で好きをくれる。
その後に紡がれるのは、もちろん
「やっばぁ……愛してるよ、慧君」
リカちゃん先生には近づいてはいけない。
だってコイツは俺の為に生き、俺の為に何でもする
俺の旦那様なんだから。
*fin*
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