アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
始まりの春
-
月日は少し流れて4月の初旬。
約1ヶ月の春休みを満喫した俺は、今日から大学生になる。起きたら歯を磨き顔を洗って朝飯を食う…という流れは今までと変わらないけれど、その後は少し違う。
「よし、完璧」
鏡に映るのは紺色のスーツに身を包み、ピンクのネクタイを締めた俺の姿だ。
高校を卒業したからって急に背が伸びることはなく、今も変わらない174cm目前の170cm。体重だって変化なし。変わったことといえば、少し髪が短くなったぐらいだろう。
前からだけでなく、後ろや横からも全身をチェックして寝室を出ようと踵を返す。そしてリビングへと続く扉を開き、部屋の中へと進む。
いつもと変わらない整理整頓された室内。
昨夜に脱ぎ散らかした服はなく、飲みかけだったマグは片付けられ観葉植物はツヤツヤと輝いている。
……って、これはさっきダイニングに向かう時に見たけど。
そもそも、服を脱ぎ散らかした原因も飲みかけのココアを放置した理由も1つだ。
春休み最終日の夜を思う存分満喫していたところを誰かさんに脱がされ、寝室まで拉致られた……というのが昨夜の出来事である。
その全ての元となるバカはソファに座り優雅にコーヒーなんか飲んでいやがる。その手には新聞、しかも日本にいるくせに英字新聞。
今日は休みのはずなのに、スーツを着ているのは急に仕事になったのかもしれない。
まるでお前は貴族か、とツッコミを入れたくなるのを耐えた俺は、そいつに話しかけ……はしない。その理由は3年目の付き合いを迎え、この後の展開が嫌になるほど身に染みてわかっているからだ。
きっとこいつなら、俺が声なんてかけなくても気づいている。その証拠に新聞を捲る手が止まった。
ゆっくりとこちらを振り返ったそいつは、今日も外見だけは綺麗で外見だけはイケメンで、外見だけは完璧だ。
だが忘れてはいけない。
その黒い瞳の奥に潜むのは悪魔で、こちらに向かって伸ばされた手は危険。
そして開いた唇が紡ぐ言葉は……
「驚いた……どこのお姫様かと思ったら俺の可愛いウサギちゃんか。慧君の陶器のように白く滑らかな肌に紺桔梗の藍がとても映えてるよ」
甘ったるい声で朝から意味不明なことを言ったバカが、にっこりと微笑み俺の手をとる。
そのバカはリップ音をたたせて手の甲にキスを落とし、言葉を続けた。
「でも、俺としては何も身に纏っていない自然体な慧君が1番綺麗だと思う……って、ことで」
ぐん、と引かれた手首。ソファの背もたれを2人の間に挟み身体を寄せてきたバカ……もとい、リカちゃんが俺の耳元で囁いた。
「今すぐ生まれたままの姿でお前と1つになりたい」
ペロリと舐められた耳朶よりも、その言葉に鳥肌が立つ。
俺の同居人であり元担任であり…………恋人である獅子原理佳、通称リカちゃん28歳。
その辺を歩いていたら人目を惹きまくる整った顔と、平均よりも高い身長。教師をしてるだけあって頭も良いし、スポーツだって出来る。
けれどリカちゃんには大きな問題点がある。そんな見た目は満点、中身は赤点の男がニヤリと笑って言った。
「やっばぁ……慧君ってば嬉しすぎて固まっちゃってる」
そう、リカちゃんは普通じゃ考えられないほどのドSで意地悪で性悪。
そして人の常識を軽々と越える変態だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
816 / 1234