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「蜂屋!お前なんでついて来んの?」
隣を歩く赤毛玉に問いかけると「俺もこっちに用があるから」と返ってきた。この先に教育学部の他に何学部があるのかは知らないが、同じ学部だけは嫌だ。絶対にやだやだ。
「なあ、ウサマル」
「その名前で呼ぶな!」
「せやけどな、ウサマルが叫ぶからめっちゃ見られてんねん。俺目立つん嫌やのに」
「てめぇがそんな頭して、そんな格好してるからじゃねぇかよ!」
廊下を競歩のように進む俺と、それにぴったりついて来る毛玉は目立つ。俺は毛玉に言い返しながらどんどんと廊下を進み、スピードを上げた。
前に進むことだけに集中していると、不意に何かにぶつかって後ろへと倒れてしまう。
「いっ、つぅ……」
見上げたそこに居たのは、同じ新入学生とは思えないほど大きな男。美馬さんよりは少し小さいけれど、それでも十分に平均以上の体格の男が俺を見下ろしていた。
「悪い。見てなくて」
ちゃんと前を見ていなかった俺が悪いのだから素直に謝る。すると返事をしたのは、その大男じゃなく隣の毛玉だ。
「ほらぁ、ウサマルがぴょんぴょん跳ねるから」
「うっせぇな!」
「お兄ちゃんごめんなー。こいつ、名前通りのウサギさんやからそんなに痛くなかったやろし、笑って許したって」
全くフォローになっていない言葉を言った毛玉は俺を立たせて一緒に謝ってくれた。
身なりを整えて軽く頭を下げる俺の肩を大男が小突く。
ゆらりと揺れた俺の身体を支えてくれたのは、またもやあ隣の毛玉だった。
「そうやってチャラチャラしてるからだろ。周りの女ばっか気にしてないで前見ろよ」
敵意をむき出しに言われた言葉。全く身に覚えのないそれと共に、鋭い視線が浴びせられて俺は固まった。それを大男は俺が怯んだのだと勘違いし、続ける。
「どうせ大学でも女のことしか考えてないんだろ」
「はあ?!」
「お前遊んでそうな顔してるし」
むけられるのは見下したような、というより完全に見下した目。
確かに俺は派手な顔だって言われるけど、実際は遊びまくっているどころか友達すらまともにいない。そして何度も言うが女は嫌いだ。
ムッとしてそいつを見上げる。けれど自分より小柄な俺の威嚇など気にもしないのか、大男は余裕そうに笑って余計に腹立つ。それでも、初日から問題を起こしたくなくて抑えた。
拳を握って横を通り過ぎようとした俺の肩に、大男の手が乗る。咄嗟に振り払おうと俺が手を上げるより早くそれは消えて、鈍い音と共に視界がクリアになった。
真横の男が一瞬にしていなくなった。
その代わりに見えたのは、赤毛玉……蜂屋が男を壁に押さえつけている姿。前髪に隠された目元はわからないけれど、口角はしっかりと上がっている。
自分より大きな男を押さえつける蜂屋の横顔は、とても楽しそうに見えた。
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