アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
11
-
「ハッチー、おはよぉ」
猫なで声で幸を呼んだのは、同じ学部の知らない女。たまに幸とそいつが話しているのを見かけるけど、俺はそいつの名前を知らないし知ろうとも思わない。
「あたしハッチーの隣座りたいんだけど」
「えっ、マジでぇ。そんなん言われたら俺めっちゃ嬉しいんやけど」
ヘラッと笑った幸は、さりげなく俺からその女を遠ざける。俺が女嫌いだと言ったから、幸は俺に女を絶対に近づけない。バレないように距離をとってくれる。
明るくて話も上手い幸はとにかく人気だ。毛玉モードの時は話しかけてこないくせに、今日みたいに整えていると女が自分から寄ってくる。
俺はそれが気に入らない。幸の外見しか見ていないのに、なんでそうやって笑えんだよって思ってしまう。
それは話しかけてくる女にも、幸に対しても言えることだった。
女が幸の隣に座るなら、俺は席を移動するために立ち上がろうとした。
出していたライオンペンをペンケースにしまい、鞄の中に突っ込む。そんな俺の手を幸が制した。
顔は女に向けたままで幸の意識は俺に向かっている。
「でもごめんなぁ。今はウサマルと大事な話してんねん」
てっきり女の味方だと思った幸が、その子に謝り手を振った。
脈ありだと確信していたのが一転して断られ、気まずそうに元居た場所へと女は帰って行く。
「いいのかよ?お前、女と話すの好きなくせに」
「あぁ、別に俺飢えてへんし……それに、ウサマルとおるのに女の子と話す意味がわからへん」
「……変わってんな、お前」
自分を選んでくれたことが嬉しくて、照れた顔を隠す。そんな素直じゃない俺に、幸はニヤニヤとした顔をぐいっと近づけた。
「なぁんや、ウサマル照れてるん?俺がウサマルより女の子選ぶわけないやん」
「ばっ、照れてねぇし!!近づくなウザい」
「口悪っ!!でも俺知ってんねんで、ウサマルはツンデレやなくてツンギレやろ。ツンツンしていきなりキレて、でもほんまは寂しがり屋やねん」
「違う!!勝手なこと言うな!」
前髪をひとまとめにして上げた幸の、全開になった額を叩く。大げさに痛がったフリをするのを睨んで、ちょうど返って来たメールを開く。
そこには待ち望んでいた『登録完了』の文字があった。
俺があんなにも悩んで、最終的にリカちゃんと言い合ってまで出来なかった履修登録が、幸の一言ですんなり出来てしまった。
コイツは何者なんだろう、と隣に座る赤毛を横目で盗み見る。
「うっわ!今日、萌ちゃん赤いパンツ履いてる!!さてはデートやな」
……何者でもなく、幸はバカで女好きの蜂屋幸だ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
827 / 1234