アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
16
-
「鹿賀はうちの高校始まって以来の秀才らしくてさ。いくら頭が良くても、このままじゃ3年には上がれない……けど高校としては将来有望な生徒には卒業してもらいたい」
「なんで?」
「一流大学に入れたって実績が欲しいんだろ。大人の事情ってやつだよ」
リカちゃんの返事に、なるほどと納得した。有名な大学に進学した生徒がいるとなれば、これからの新入生も増えるだろうし学校としては助かる。
けれど、どうしてリカちゃんに関係あるのかがわからない。
2枚目捲って、と言われて次の紙を見る。そこには目を疑う言葉が羅列していた。
「え、これマジ?マジで言ってんの?」
「マジだよ……だから嫌なんだ」
両手で顔を覆ってしまったリカちゃんだけど、それも仕方ないと思う。
その2枚目には鹿賀ってヤツが今までしてきた教師に対する嫌がらせが書かれていた。
まず学校に来るよう説得をした担任に対し、そいつの授業がどれだけ低レベルかを延々と言い続け、学力テストで勝負して大勝したとか。
その次は2年の学年主任の嫌なところをレポート用紙にまとめ上げ、毎日のように学校へ送りつけたとか……とにかく精神的な攻撃がたくさん。
その1つ1つは大したことなくても、積もり積もると相当なストレスになるだろう。現に鹿賀の担任は学校を辞めてしまったらしい。
「お願いしますって2年の担当教諭全員で来てさ……しかも教頭と学園長も一緒に。そんなの断れるわけないだろ」
「あぁ、お前外面だけはいいもんな」
「本当に気が重い。なんで俺が見ず知らずの我儘なクソガキ相手にしなきゃならないんだ…」
そう嘆くリカちゃんは本気で嫌がっているらしく、俺から奪った鹿賀の資料をデスクの上に放り投げた。ひらひらと揺れたその紙には、入学当初の鹿賀が嬉しそうに笑っている。
俺よりも小柄で、少し幼い感じの少年。照れたように笑う姿からは、凶悪な一面は感じられない。
「なんか、そんな風に見えないのにな」
ボソリと呟いた俺に、リカちゃんはマグカップに口をつけながら興味なさげに答える。
「人は見かけによらないって事だろ」
「確かに。リカちゃんも喋らなければ普通だもんな」
「慧君、それどういう意味?」
椅子が軋む音が聞こえ、それごと俺に向かい合ったリカちゃんが目を眇める。それぐらいじゃビビらない俺は「喋ったらお前は可笑しい」と返した。
途端にリカちゃんの口角が上がる。
「それを言い出したら慧君だって見かけによらないよな。普段はクールを装ってるけど、俺の前だと可愛いウサギちゃんだし」
「は?誰が可愛いウサギだ」
「でもベッドの上だと色っぽく強請って、甘えてくる子猫ちゃんに変わる。人の心を弄ぶ、いけない子」
カップの柄を握っていたリカちゃんの指が、俺の左手に移動する。薬指の根元にある指輪に触れ、表面をそっと撫でた。
これはまずい展開だ。あからさまな甘ったるい雰囲気に、掠れさせた声に、詰められた2人の距離。
デスクに凭れて立っている俺と、座っているリカちゃん。目線が下にあるのは後者だ、ってことはリカちゃんは上目遣いをしてくるわけで。
「慧君、俺を元気にして。これは慧君にしか出来ないことだから…ね?」
「ね?」って何がどうなって、俺は押し倒されたんだろうか。全くもって理解できないが、リカちゃん相手ならそれも仕方ない。
横たわった机の上、性急に片された……というか無理に退けられたプリントやパソコンを横目で眺めながら、そんなことを考えた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
832 / 1234