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翌日。予想通り痛む腰を庇いつつ大学へ向かう。オリエンテーション続きだったのも落ち着き、そろそろ講義が始まるっていうのに……そこに幸の姿はない。
2限目が終わり、昼食のために食堂へと来た。幸が隣にいないと、いつもより視線を感じずに済むのは楽だ。
出来るだけ周りに人がいない席を探し、トレイを机に置いて座る。今日はあんまり食欲がなくて軽めのサンドイッチにした。
これなら、声を出し過ぎて痛む喉にも優しい気がしたからだ。
1人で食べる飯は久しぶりで少し寂しい。今までなら拓海が騒いで、歩が揶揄って……でもって、ふらっと現れたリカちゃんがいたのに。
ハァ、と重たいため息をジュースと一緒に流し込む。そんな俺に誰かの影が差した。
「1人なら連絡すりゃいいのに」
「……なんだ、歩か」
「どうせ俺も1人なんだし」
十中八九そうだと思ってたけど、やっぱり俺に話しかけるのは歩ぐらいだ。もう飯を済ませたらしい歩は、前に座って欠伸をしている。
「バイト?」
その寝不足の原因を訊ねると、小さく頷いた歩が目を擦った。
大学に入ってからバイト時間を少し増やした歩は、疲れているのがよくわかる。それでも特待生の枠を譲りたくないから、と人より多く講義を受け、1年にしてゼミやらなんやら頑張らなきゃならないのを俺は見ていた。
殺しきれない欠伸がまた歩の口から出る。
「お前マジで大丈夫なの?ただでさえ法学部は難しい講義多いんだろ?」
「あ、あー……まあ1年はなんとかなんじゃねぇの。来年からは専門的なのが増えるってサークルの先輩が言ってた」
「えっ?!お前サークル入ってんの?!」
初めて聞くその話に、俺は持っていたグラスを置いて聞き返した。すると歩は「言ってなかったっけ?」と首を傾げた。
「聞いてないし!なんのサークルだよ」
「バスケ。部活みたいなガチのじゃなくて、お遊びだけどな」
「そっか……お前、中学の時はバスケやってたもんな」
とは言っても熱心にしてたわけじゃないけど。歩にとってバスケは背を伸ばす為の手段であって、今回もきっとそうだろう。どうやら180cmはまだ諦めてないらしい。
法学部で見た目だけは悪くない、そんな歩がバスケなんてやってみろ。そりゃ騒がれるに決まってんだろバカめ、と言いたくなるけど、言うと面倒くさいから黙る。
第一、歩は周りの評価なんて気にしない。
今だって向けられる視線はガン無視で、俺のサンドイッチに付いて来たポテトを盗み食いしている。
それを口に咥えた歩が、食堂の入り口を見て眉を顰めて言った。
「うっせぇの来た。今日は人型か…」
歩の視線を追って振り返った先には、赤い毛玉……ではなく、赤髪のイケメンが手を振りながら歩いて来る姿があった。
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