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「それがどうかしたのか?」
もう数日後の話なのに、いまさら予定を確認してきた歩に訊ねる。すると歩はスマホをポケットにしまって立ち上がった。
「バイト休み変わってもらっただけ。俺もその日いるから」
「それはいいけど」
「多分、世界一うっぜぇのが来るけどお前頑張れよ」
それが誰なのかは教えてくれず、歩はスタスタと食堂を出て行った。残されたのは俺と、既にウザい関西弁の男。話に入ってこれなかった幸が、俺の服を引っ張る。
「なあウサマル。歩の家族とウサマルって仲いいん?」
「あ、あぁ」
「ほんじゃさ、彼女ちゃんの家族とは?」
「え?いい……かなぁ」
リカちゃんのお父さんはなぜか俺のことを天使ちゃんと呼ぶし、お母さんとは何度も会った事あるし。そしてなにより、弟はさっきまで目の前にいたんだし。
認めた俺に、幸の表情が少し翳った。
「そっか。せやな、ウサマルやもんな」
けれど俺の勘違いだったのか、幸はいつも通りの笑顔で机に頬杖をついて俺を見る。
「それがどうかした?」
「いや、普通のカップルってどんなんかなーって思っただけ」
「なにそれ。お前だって誰かと付き合ったことぐらいあるだろ」
幸のような外見なら1度や2度ならず、恋愛の経験はあって当然だろう。何も意識せず言うと、幸は肯定も否定もせず黙って目を伏せる。
「幸?」
「ん?なんなん、ウサマルってば俺の過去の女に妬いてんの?そんなんせんでも、俺にはウサマルだけやで!」
「はぁ?気色悪いこと言うなって」
抱きついてこようとした幸の顔を突っぱね、俺は残りのジュースを飲み干した。トレイを返す為に立ち上がれば、続いて幸も席を立つ。なぜかついて来る幸を後ろに従え、俺たちは食堂を後にした。
次は必修だから幸と俺は同じ講義を受ける。とすれば、一緒に教室まで向かうのは当然だ。
何度か通って覚えた道を歩く俺の肩を、幸が強く掴んだ。
「なあなあウサマル」
「なに?早く行かないと後ろの席なくなるんだけど」
「次って教育概論やん?俺な、プリント忘れたからコピーさせて」
「え、やだ」
断ると、見えない耳を垂れた幸が泣きそうな顔で俺を見た。見つめ合うこと数秒……先に折れたのは俺だった。
「わかったよ……今回だけだからな!次は無いからな」
「わーっ、ウサマル男前、カッコイイ!!抱いて……は、無理やごめん」
「俺も無理だし。っつーか調子のんなバカ」
騒ぐ幸の背中を叩き、鞄の中から言われたプリントを出す。それを受け取った幸は、
「友達ってええなぁ…」
と、すごく嬉しそうに呟いた。いちいち反応が大げさなのは、関西人の特徴なんだろうか。
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