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「俺とリカちゃん……倦怠期かもしれない」
ストローでカップの中をかき混ぜながら言った俺に拓海が瞬きをする。
「はぁ?!」と気の抜けた声を発したかと思ったら、それは一瞬にして大爆笑に変わった。
「ありえない!!慧たちが倦怠期?!それ何の冗談だよ」
「冗談じゃねぇよ!!今回はマジでヤバいんだって……シャレになんねぇから」
「大丈夫だって。リカちゃん先生だぞ?あの慧バカで慧しか見てなくて、慧以外は芋みたいな扱いするんだぞ?多分さ、リカちゃん先生は慧とその他って区別してると思う」
大きな声で笑って言った拓海がズズッ、とカフェラテを飲んだ。拓海の細い喉がそれを体内へと落とし、俺を見る。
「なんで急に倦怠期だって思ったんだ?別に喧嘩してるわけじゃないんだよね?」
「してない。俺とリカちゃんじゃ喧嘩にならない」
「あ、そっか。リカちゃん先生って実はあんまり怒らないもんなぁ」
学校で注意されることはあっても、プライベートのリカちゃんは穏やかだ。俺が怒って、リカちゃんが宥める。謝るのもリカちゃんで年上の余裕を見せつけられる。
もしかしたら、それに疲れてしまったんだろうか……思い当たる節が多すぎて悩みは尽きない。
「俺とリカちゃんってさ、基本リカちゃんが全部してくれんじゃん。逆だったら絶対無理だ」
俺の一言に拓海は曖昧に頷いた。
仕事で疲れて帰って来て俺の面倒をみて、あれしてって言えば優先してくれて。休みの日だって早く起きて、平日に出来ない家事を終わらせてから俺を起こす。
もうここまでくれば、恋人を越えてお母さんだ。
リカママ……笑えない。
どんどん沈んでいく俺を見て、拓海が呑気な声で言ってくる。
「それなら慧も手伝えばいいじゃん。リカちゃん先生ほど出来なくても、慧なりに頑張ればいいだけだろ?」
「そうだけど。しようと思ったら終わってんだよ……アイツなんなの。ロボットなのか?」
「いや、ただの変態教師」
間髪入れない拓海の返しに戸惑いつつも、納得するけど。だからって、リカちゃんが俺に冷めてきていない証拠にはならない。
そこまで悩むほど愛情度10%の壁は大きい。
「なあ拓海ぃ……俺どうしたらいい?」
悔しいほど情けない声が出て、俺はテーブルに額を打ちつけた。かなり痛いけど、そうでもしないと想像だけで泣いてしまう。
もしリカちゃんが本当に俺に冷めてて、気持ちがゼロになったら……あの顔であの声で「慧君ごめんね、もう俺お前に飽きちゃったから別れる」なんて言われたら軽く死ねる。俺もう死んじゃう。
うーん……と考えた拓海が、手を打つ。
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