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「リカちゃん、怪我でもしたのか?」
やたらとファンシーな絆創膏が巻かれた長い指。問いかけると、リカちゃんは緩く首を振って否定する。
「じゃあなんで?」
「慧君が指輪するなってワガママ言うから。こういう時じゃなきゃできないのに」
恨みがましい顔をしたリカちゃんは、自分の指に口付けた。指輪代わりのそれを、再び俺の前に突き出す。紫色の花の絵が、リカちゃんの白い肌によく映える。
「慧君慧君、ちなみにこの花はなんでしょう?」
「は?そんなの知るか」
俺は桃ちゃんみたいに花に詳しくないし、リカちゃんみたいに何でも知っているわけではない。その花が何か興味すらない俺は、目的階に着いたエレベーターから降りる。
廊下を進んで奥から2番目の部屋が歩の家。そこへと向かう1歩目が、突然方向転換し、階段の影に連れ去られた。
そんな横暴なことをするのは、こいつしかいない。
「なんだよ急に!」
「ヒントはね、冬から春にかけて咲く小さな花」
「だから興味ねぇって……リカちゃんしつこい」
「でもって花言葉は、あなたのことで頭がいっぱい、らしいよ。もう1つあるから慧君も付ける?」
ポケットから出したもう1枚の絆創膏を、リカちゃんが目の前で振る。目前にあるそれよりも、俺が気になったのは、リカちゃんの言った「らしい」というフレーズ。
「……お前、それ誰に貰った?」
「これ買った店の人」
「それってさ、それって……」
完全にアピールされてんじゃねぇかよ!!わざわざ花言葉まで教えて、しかも意味深な言葉で……ってどう考えても、そうとしか思えない。それなのに喜んで巻くコイツが意味わかんない。
しかも、目の前に翳された絆創膏に何か書かれていたのを見つけたから余計だ。
一瞬で詳しくは見えなかったけど、あれは確実に電話番号だった。
花模様の浮かぶリカちゃんの指を掴む。器用に巻かれたそれは、どこから剥がしていいかわからず俺は思いきり引き抜いてやることにした。
引っ張って絆創膏を伸ばし、無理矢理に外そうとすると、リカちゃんが痛いと文句を言う。そんなのは完璧にスルーして何度も繰り返し、やっと剥がれた残骸を廊下の外へと放り投げた。
「慧君が俺のことを永遠に想ってくれるよう願掛けしてたのに。無理に剥がしたら意味なくなるだろ」
赤くなった指に息を吹きかけ、唇を尖らせるリカちゃんを鋭く睨む。
拓海に言われた『リカちゃんを試す』っていうの、本当は悩んでた。そんな事をすると、リカちゃんを疑ってるみたいで悪いよなって思っていた。
けれど決めた。今この瞬間に、俺は作戦を実行する。
リカちゃんがこんな無神経な行動をするのも、もしかしたら『倦怠期』だからかもしれない。それを俺は確かめなければいけない。
「お前はもう少し自分のことにも気を配れ!!この天然たらしが!」
怒鳴った俺に、リカちゃんは首を傾げる。
倦怠期なんて絶対に許さない。
リカちゃんはいつだって慧君慧君言ってるバカじゃなきゃ、やだ。
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