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18歳以上ですか?
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素早く自分のスマホを操作しはじめた幸は、それを耳に当てて席を立った。残された俺は1人、机に突っ伏す。
このまま今日はサボってやろうか、なんて考えていると意外にも幸はすぐに戻って来た。
しかも、なにやら得意そうな自信に満ちた顔で。
「ウサマル、決戦は木曜の夜やで。ほんまは金曜が良かったんやけど、さすがに週末は仕事休まれへん」
ニッと笑った幸が親指を立てる。
やたらと古いその仕草と意味のわからないセリフに、俺が何も答えないでいると、俺の隣の椅子に座った幸が小声で耳打ちしてきた。
「はあっ?!ご、合コン?!」
カフェに響く俺の声。講義中でほとんど人がいない中、数人の視線が俺たちを見る。
「しーっ、これ極秘やから!」
「極秘……ってかなんで?なんで合コン?」
「だって彼女ちゃん試したいんやろ?それなら飲み会が手っ取り早いやん」
「だからって合コンは……っ」
そんなのリカちゃんが許すか?答えはもちろん「許さない」だ。いくら最近は俺に寛容なリカちゃんでも、さすがに合コンとなれば話は別だろう。
「そもそもさ、俺まだ未成年なんだけど。お前だってそうだろ」
1月に18歳になったばかりの俺は、公に酒なんて飲めない。それを幸に言うと、目の前の赤毛は首を傾げた。
「あれ、俺ウサマルに言ってなかったっけ?俺な、もう20歳越えてんで」
「……は?」
「1年遅れの入学でー、でもって誕生日が5月1日の恋の日やねん。めっちゃ可愛くない?」
この際、幸の誕生日が恋の日だろうが愛の日だろうがそんなのは関係ない。問題は幸の年齢が20歳を越えているということだ。
「聞いてないんだけど!!」
眦を吊り上げて怒る俺に、幸は緩く笑って両手を合わせる。
「ごめんって。タイミングなくて……あ、もちろん今まで通りタメ語でええで」
「当然だ!」
あまりにも悪びれない幸の様子に、俺はため息をついた。
そう言えば、幸はあまり自分の話をしない。1人暮らしをしていて、高校でこっちに来るまでは関西に住んでいた……ということしか俺は聞かされていなかった。
「もういいけど。それ以外に何か隠してる事とかないよな?吐くなら今のうちに吐け」
幸を軽く睨むと、今日はイケメン仕様の蜂屋幸が笑う。
「ウサマルが刑事さんみたい。なんなん、俺ってば逮捕されんの?ミニスカポリスよりナース派やねんけどなぁ」
「バカにすんな!で、他には?」
ヘラヘラと笑い、幸は赤い毛を掻き上げる。持っていたゴムでそれを軽く纏めると、端整な顔立ちがより目立つ。
その雰囲気はどことなくリカちゃんに似てるようで、でもリカちゃんより近づきやすい感じがした。
「んー……別に隠しとったつもりはないんやけど」
そう前置きをした幸が手を伸ばす。オシャレな服に見合ったオシャレな鞄を手繰り寄せ、中から小さな長方形のケースを出した。
俺がリカちゃんにプレゼントしたシガレットケースと同じぐらいの大きさのそれ。開いたそこから薄い紙を取り出し、俺の目の前へと置く。
そこには細く綺麗な文字と、王冠のマークが印刷されていた。その紙を二度見し、俺は驚きで幸を見つめる。
「ご指名ありがとうございます……サチです。なーんてな」
小首を傾げた目の前の赤毛玉の正体は、1学年年上で毛玉のくせに本当はクソイケメンで……そして、俺とは無縁の世界の住人だった。
「──っ……ありえねぇ」
驚きが限界を超えた俺は叫ぶことも出来ず、初めて貰ったホストの名刺を凝視するしかできない。
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