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とうとう運命の日がやってきた。
今日は木曜日…人生で初めての『合コン』の日だ。前日の夜はリカちゃんにバレたらどうしようと緊張して、いつもより2時間も寝るのが遅くなってしまった。
そして今。
俺は幸を隣に座らせ、講義室の端っこでスマホと睨めっこしている。
「なあウサマル。なんでそんな緊張してんの?」
今日もイケメンモードの幸が何度目かのため息をつくが、俺の耳には入ってこない。
なぜなら文字を打つことに集中しているから。
直接リカちゃんに言うのは怖すぎて、俺は急に決まった飲み会だという設定にしようとしている。文章なら緊張は伝わることはないし、余分なことを言ってしまう心配がないからだ。
「そんなんパパッと送って返事はシカトしたらええやん」
「お前はバカか!あいつがどれだけ怖いか知らねぇから、そんなの言えるんだよ!!」
もうリカちゃんは俺のことなんか気にしてないんだ、と思いつつもドキドキしてしまう心臓。なんて打つか悩みに悩み、指が動かなくて机に突っ伏した。
「やっぱ……無理」
「は?」
「俺には無理だ。リカちゃんが怖すぎる」
正確にはリカちゃんを怒らせるのが怖い。笑いながら怒られる、あの恐怖を幸は知らない。
「はあ……そんなん言うても、もう数時間後には始まってんで」
今日最後の講義がもうすぐ始まる。それを終えて少しすれば合コンの開始時間はすぐそこ。
悩んでいる時間はないけれど、行動する勇気もない。
唸って迷って、やっぱりやめて頭を垂れる。すると、見かねた幸が俺のスマホを奪った。
「――…はい、終了」
そこにはリカちゃん宛にメッセージを送った形跡。獅子原理佳宛のそれは、何の問題もなく届いてしまっていた。
「さっ、幸!!」
「しゃあないやん。ウサマルがいつまでも、うじうじしてんのが悪い」
「だからってお前……こんな」
「ちゃんと合コンやなく、友達と飲み会ってことにしといたったから。俺の優しさな」
画面に映るのは「飲み会に言ってくる。帰りは何時になるか決まってない」という簡単なメッセージ。
元々、絵文字を使わない俺だから怪しまれることはない……けれど。
それでも色々と考えてしまって、俺はため息をついた。
「ってかさあ。ウサマルの彼女、すんごい名前やな」
自分の鞄からノートパソコンを取り出しながら幸が言う。幸は基本、ノートじゃなくパソコンで授業を受けていて、初めてそれを見た時はすげぇ驚いた。
「なにが?」
「だって獅子原って。どっかのお嬢さまみたい」
「あー……ああ、そういうこと。まあ金持ちではあるかな」
やたらとデカいリカちゃんの実家に、本人もかなりセレブな感じがあるし。頷くと幸は俺を横目で睨んだ。
「なんだよ?」
それに対し訊ねると、少しだけ恨めしそうに言ってくる。
「お嬢様で家事も全部やってくれる、しかも年上。そんな彼女おって合コン行くなんて、ウサマルってば薄情者」
「それはお前が……っ!!」
「あーあ。もしウサマルがリカちゃんと別れたら、俺が立候補しよかな」
嫌な笑い方をする幸の足を蹴り、俺は鋭く睨みつける。
「嘘やって。友達の元カノに手出す気はないし。あ、でもお客さんにはなってほしいかも」
「お前はバカか。あいつがホストに通うわけないだろ」
「そんなんわからんやん?意外とハマるかもやで」
リカちゃんなら客じゃなく、ホスト役の方だ。幸がどれぐらいの人気なのかは知らないけれど、もしリカちゃんがその店で働いたら間違いなく1番になるだろう。
熟女から若い女まで隣に侍らせ、得意のリカ語で口説きまくる。キスもエッチも上手いリカちゃんなら、みんな喜んでお金を落としそう……ほら、やっぱりはまり役だ。
いつか返ってくるであろう返事を待ちながら、俺はそんなことを考えていた。
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