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結局、大学にいる間にリカちゃんからの返事は来ず、俺は時間を潰す為に幸の家に来た。
初めて上がる幸の部屋は、男の1人暮らしって感じのワンルームで、普段リカちゃんで慣れている俺からすると散らかっている。
「お前なぁ……ちょっとは片付けろよ」
部屋着が脱ぎ散らかされたベッドの上に腰掛け、俺は室内を見回す。
至る所に掛けられている服は派手で目立つ。スーツも何着も掛けてあって、こうして見ると本当にホストなんだと実感した。
高そうな腕時計が転がり、同じく高そうなアクセサリーが散乱するテーブル。人からの貢ぎ物だからか、幸はそれを邪魔そうに端に退ける。
「男の1人暮らしってこんなもんやで。俺はあんまり家におらん分、綺麗な方」
「これで?」
「ウサマルの場合は彼女ちゃんが掃除してるからやろ」
ある程度テーブルを片した幸が取り出したのは程よい大きさの箱だ。蓋を開いた中には、俺も見たことのあるスプレー缶やワックスがたくさん入っていた。
「ほら、ここ座って」
鏡をセットした幸が俺を呼ぶ。おとなしく従えば、後ろに回り込んだ幸が俺の髪に手をかけた。
「うっわ……これ絶対、金かかってる。お前いいシャンプー使ってるやろ?」
「知らね。いつもリカちゃんの使ってるから」
「はい出た。ほんまウサマルはリカちゃんに愛されてんね」
からかうような口ぶりに振り返れば、動くなと注意されて終わる。手際よく俺の髪をセットした幸が満足げに「うん」と呟いた。
「上出来。元がええから映えるな」
いつもは分け目のない前髪が幸の指によって右に流され、動きをつけるように綺麗な形を描く。まるで拓海のような器用さに、俺は率直に「すごい」と褒めた。
「幸ってさ、本当になんでも出来るよな」
勉強も出来て器用で、友達も多くて性格もいい。そんな幸が眩しくて俺は感心する。
けれど幸は珍しく苦笑いで応えた。
「そうでもないで」
「謙遜すんなよ。幸みたいに頭よくて留年って入院でもしたのか?」
「入院ちゃうけど、そんな感じ。それより暇やったらテレビでも観とき」
今度は自分のセットを始めた幸から離れ、またベッドへと戻る。崩れるから寝転ぶなって言われたから、仕方なく壁に凭れてテレビ画面を眺めた。
家とは全然違うのに居心地がいいのは、幸がいるからかもしれない。タイミングよく話しかけられ、俺がテレビに集中してたら黙る。
ほらやっぱり幸は頭がいいし人のことをよく見ている。
「俺、幸と友達になれて良かったかも」
リカちゃんには発揮されない俺の素直な一言。それに幸が嬉しそうに笑った。
「それは俺の台詞やねんけどな」
「なんで?幸なら俺の他にも友達いっぱいいるのに」
大学でやたらと話しかける幸。今日だってすぐに人を集められた幸。
幸の友達は俺だけじゃない…はずなのに。
「俺の友達はウサマルしかおらん。あ、今は歩もおるけど…でも1番はウサマルやで」
髪を整え、更にイケメンになった幸が真っ直ぐに俺をみて微笑む。
それがすげぇ嬉しくて、俺も笑った。けれど、鳴らないスマホが胸に小さな棘を残したままで、気になって仕方ない気持ちをどうにか封じ込める。
「そろそろ行こか。今日はめっちゃ楽しむで!」
そして、とうとう運命の時が来る。
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