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来るかとおもった2回目の衝撃は、いつまで待ってもこない。その代わりに聞き馴染んだリップ音と柔らかい温もりが触れる。
「慧君のそういうワガママなところが好き」
「──は?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった俺だけど、それは仕方ないことだと思う。
だって怒られるかと思ったら怒られなくて、でもデコピンされて痛くて、そしたらワガママって言われて…それなのにワガママなところが好きって言われたんだから。
だから戸惑って当然だと思う。それなのにリカちゃんは、俺に頬ずりしながら笑っていた。
「大学生になって大人になったかと思ったら、慧君は慧君のままで安心した」
「いや……ちょっと何言ってるかわかんないんだけど」
「だから、ワガママな慧君が好きなんだって。慧君に振り回されんの本当に好き。あ、もちろん慧君が甘えてくれるのも好き」
一周してリカちゃんはドSからドMになったんじゃないかと疑ってしまう。それぐらい上機嫌で、やけに気味が悪くなった俺は、喜んでいる男から、なんとか這い出した。
するとリカちゃんはすかさず追いかけてきて、後ろから抱きついてきやがる。
「なんで逃げんの?」
「なんでって。お前やっぱり頭おかしいって」
「とか言って、本当は好きって言われて嬉しいくせに」
ぎゅっと抱きしめてくるリカちゃんは、全てお見通しだとばかりに自信たっぷりだ。
このまま鼻歌でも歌い出すんじゃないかと思うほど、嬉しそうに笑っていた。
「本当に怒ってない?」
振り返ると、目と鼻の先にリカちゃんの顔がある。至近距離にあるそれに驚きつつも、確認するように様子をみた。
「嘘ついたことと、連絡を無視したことはいただけないけどな。それ以外は特に」
「絶対に嘘だ。そうやって油断させておいて、後から怒るんだろ?!」
「そんな面倒なことするなら今怒るって。それに、俺は嘘はつかない」
かぷ、と俺の鼻先を甘噛みしたリカちゃんからはいつもの匂いがする。今日はリカちゃん1人分のそれは普段より香りが少し弱くて、けれど逆にそれが心地良かった。
純粋にリカちゃんだけの匂いがして、背中に体重を預け、リカちゃんにもたれかかる。
腹の辺りに回された手。俺の身体を挟む長い足も、肩の位置にある綺麗な顔も全部俺だけのものだ。
昨日あまり眠れなかったからか、トクトクと鳴る心臓の音が眠りを誘う。もうこのまま寝てやろうかと瞼を閉じた時だった。
「俺がお前に冷める時なんて一生こないだろうな」
のんびりとした声色で、ゆったりとした口調でリカちゃんが言う。
顎を上げ、リカちゃんを見上げると想通り目が合った。リカちゃんはちゃんと目を見て言うやつで、嘘はつかない。
冗談は言ったとしても、嘘は絶対につかない。
「それマジで言ってる?」
だから俺は、またリカちゃんを試すために確認する。本当に性格が悪いのは自分のような気もするけれど、聞きたいっていう欲は抑えられない。
「大マジ。慧君が安心するなら何でもしてあげる」
「何でもって例えば?」
訊ねた俺にリカちゃんは少しだけ考えて、ふっと口元を緩ませた。
「じゃあ約束するっていうのは?どんなことがあっても、冷めずにお前だけを思い続けるって約束」
リカちゃんは俺との約束は破らない。それをわかっているから言葉の代わりに頷くと、俺の小指に自分のそれを絡め、しっかりと握る。
「はい約束……って、これは指離さなきゃ駄目なやつか…離したくない場合、どうしたらいいんだろうね」
緩く笑って情けないことを言うリカちゃんに、言葉にできない気持ちが募る。
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