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すごく嫌そうに「行ってきます」を零したリカちゃんがやっと玄関を出て行く。朝起きた時からテンションが低かったリカちゃんは、どうやら午後に鹿賀の家に行くのが本気で嫌らしい。
出来るだけ早く帰るから今日は必ず家にいること。そう何度も注意をしたバカを見送り、家に1人になった俺は何をするか悩む。
授業が始まったばかりで課題は出ていない。こういう時にバイトとかしていたらいいんだけど、そんな予定もなく、遊ぶ友達だっていない。
拓海に連絡するべきか、それとも歩……は昼過ぎるまでは寝ているだろうし、それは幸も同じだ。
「暇すぎる」
ぼそりと呟いた独り言が1人きりの部屋に響く。気晴らしにテレビでもつけてみたけど頭に入ってこず、ただのBGMに変わってしまった。
ソファに座ってゲームをしても飽きて、ベッドで転がっても二度寝できそうな気配はない。それなら俺にでもできる洗濯でもしようかと立ち上がったけれど、洗濯かごは空だった。
「ダメだ……リカちゃんがロボット過ぎて何もすることがない」
綺麗すぎる部屋は手をつける箇所もなく、料理が一切できない俺が夕飯の準備をするなんて無謀。かと言って1人で出かける気にならず、なんとなくベランダに出てみる。
もう少しすれば梅雨だなんて思えないぐらいの快晴に、思わず頬が緩んだ時だった。
「あら、ウサギちゃんもう起きてたのね」
ベランダの手すりから身を乗り出していた俺を呼ぶのは、隣に住む桃ちゃんだ。
「桃ちゃん仕事は?」
「今日はお休み。大きな案件が片付いたから気が楽だわ」
いつも忙しそうな桃ちゃんが土曜日に休みだっていうのが珍しく、俺は少し驚いた。
「ウサギちゃんこそ、こんなところで何してるの?あいつは?」
桃ちゃんが言う『あいつ』とはリカちゃんのことだ。
今日は仕事で居ないことを告げると、暇なら遊びに来る?と誘われた。時間を持て余していた俺は、迷うことなく頷き家を出る。
「お邪魔しまーす」
1年前までリカちゃんの家だったそこは、やはり懐かしく感じる。桃ちゃんが引っ越してきてから何度か遊びに来たことはあるけれど、不思議な感覚だった。
リカちゃんの雰囲気も残しつつ、けど桃ちゃんらしい部屋。共通して言えるのは、綺麗好きだってことかもしれない。
黒ベースから白ベースに変わった部屋。桃ちゃんに促されるままソファに座ると、出されたのは冷たい紅茶だった。
「ちょうど暇してたからウサギちゃんが来てくれて良かったわ」
「暇って……桃ちゃん、ずっと仕事だったから疲れてんじゃないの?」
「それはそうなんだけど。普段あんまり休まないから、急に時間ができると使い道がわからない」
困ったように笑う桃ちゃんに、俺も大人になったらこうなるのか…と考えてみる。そんなの絶対に無理だと思いながら出された紅茶を飲むと、すごく甘くて美味い。
「これ、俺の好きな味」
ごくごくと勢いよく飲む俺に、桃ちゃんは嬉しそうに笑った。その理由を聞いてみると、歩はこれが苦手で飲むのを嫌がるらしい。
「本当、あたしと歩ちゃんって好みが真逆なのよ。だから今日は自分のしたい事をする日にしちゃった」
ふふっ、と笑った桃ちゃんがおかわりを注いでくれる。
せっかくの休みなのに、歩と会わないらしい桃ちゃんに疑問に思った俺は、考えるよりも先に口を開いていた。
「それって倦怠期ってやつじゃないの?」
俺の一言に、桃ちゃんはつり目がちな大きい目を、更に大きくさせて驚く。
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