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「や……やっぱり無理!どう考えても無理だって」
静かな部屋に、抑え気味に落とした俺の声が響く。
「大丈夫。慧君ならできるから」
「できるわけねぇだろ!」
小声ながらもしっかりと諫めると、リカちゃんは少し拗ねたように眉を寄せた。けれど、そんなことされたって無理なものは無理だ。
「さっきまで、あんなに可愛く啼いてたのに」
下から見上げてくるリカちゃんが目を細める。
リビングにいる鹿賀に聞こえないよう、俺がどれだけ声を我慢したか…それもこれも、全てリカちゃんのせいだ。
中に入りたいと宣言したリカちゃんにより、俺の身体は準備万端とばかりに可愛がられたわけで。
十分過ぎるほどの気遣いを見せられ、程よく蕩けたところで言われたのは「慧君から俺を受け入れて」だった。
リカちゃんに跨ったまま受けた愛撫で、奥は疼くし後ろはひくひくと震えてるけれど……いざ自分から挿れるとなると話は別だったりする。
正直言って怖い。実物をまじまじと見て、直接触れた後に「さあ挿れて」って言われると、尻込みしてしまうのは仕方ないんじゃないだろうか。
もう何回もしてんだろって言われたとしても、緊張と不安が残るのは、いつもリカちゃんがしてくれるからだ。
俺からしたことなんて、片手でも余るぐらいだと思う。
尻の後ろに触れる温もりは熱すぎるほどに熱い。それが求めていることはわかっているけれど、最後の勇気が出なくて俯く。
「……リカちゃん、お願い」
自分でもよく出せたなと思うほど甘い声でねだる。きっとリカちゃんなら「慧君やっばぁ…」で叶えてくれると思ったのに。それなのに、下から俺の腰を支える手は外されない。
「リカちゃん、無理だから…っ、お願い」
「いくら可愛く言っても駄目。俺、これでも機嫌悪いんだからね」
「さっきまで気持ち悪いぐらい笑ってたくせに!」
あれほど頬を緩ませて人の身体を好き勝手触っていたくせに、一転して機嫌が悪いと言い張るリカちゃんを睨む。
素っ裸で身体に跨り睨んだとしても、それは効果なんて無かったみたいだ。リカちゃんは動じることなく、目を眇めた。
「旦那が仕事してる間に、他の男と仲良くなるなんて許せないな」
「別に仲良くなってないし…っつーか、旦那って…」
「時間も忘れるぐらい夢中になって楽しんでたようだけど」
その言い方だと誤解を生みそうだ。他の男と言っても相手は鹿賀だし、楽しんでたのはゲームだし、そもそも男同士でゲームしてたぐらいで機嫌を悪くする必要なんてない。
読み終わった本をあげただけで怒ってたことは棚に上げ、くだらないことに機嫌を損ねたリカちゃんに呆れる。
どうやらそれは本人にも伝わってしまったようで……
「慧君に触れない、いちゃいちゃできない。そんな地獄に耐える俺に、そういうの見せつけるなんて考えられない」
「………今ずっと触ってたじゃん…今だって腰撫でてんじゃん」
「慧君、何か言った?」
地獄耳のリカちゃんは、俺の小さな反論も拾ってしまう。これ以上機嫌を悪くさせちゃ面倒くさいこと間違いないのに……俺に残された選択肢は少ない。
リカちゃんを説得するか、交換条件でも出して許してもらうか、言うことを聞くか。そのどれかだ。
まだまだ足りないと疼く身体に、気になる別部屋の存在。テレビの音が聞こえないってことは、もう寝たかもしれないし、今まさに寝ようとしているところかもしれない。
鹿賀の様子を窺うことに必死だった俺は、いつの間にかリカちゃんの手が動いていたことに気づかなかった。
「──い、ああっ」
グッと握られた自身が赤く染まる。小さな痛みで俺の意識を自分に向けたリカちゃんは、黒い目を怖いぐらいに向けてくる。
「慧」
ふざけてじゃなく、しっかりと呼ばれた名前は、リカちゃんが本気で機嫌が悪い証拠だ。閉じてしまった瞼を開けて、俺は見るんじゃなかったと後悔した。
今にも食われるんじゃないかと錯覚しそうなほどに鋭くて、でも他のやつに向ける冷たい眼差しじゃない。ちゃんと俺を思ってくれてることが伝わる目に弱い。
普段は甘ったるいリカちゃんがこういう顔をすると、俺は弱いんだ。
「わかった……自分でする…から、手伝って」
いい子と俺の頬を撫でたリカちゃんの手は、いつの間にか温かくなっていた。
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