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「ちょっと前にリカちゃんと喧嘩した。ほら、居候いただろ?あれが……」
すぐさま詰まる言葉。だって幸は鹿賀が男だって知ってる。もし鹿賀に告白されたけど、本当は恋愛感情じゃなくて、でもそれをリカちゃんに誤解されて……なんて続けたら幸を混乱させてしまう。
男なのに男に告白されたのか?って。相手が男なのにリカちゃんはどうして怒るのか?って。
それを聞かれたら答えられない。けど鹿賀とのことを話さなきゃ、先には進めない。
言いたいことを言う為には、言いたくない事を言わなきゃいけない。どうしようかと悩んでいると、軽く頷いた幸が口を開く。
「こういう時は、バンビちゃんと色々あって喧嘩した。それでええやん。俺はどんな理由があっても、バンビちゃんよりウサマル派やし」
「いや、うん……ウサマル派ってのが、よくわかんないけどな」
「んで?バンビちゃんが原因で喧嘩して、続きは?」
詰まり詰まりになって、具体的なことは言えない。喧嘩の内容も、リカちゃんが強引に襲ってきたことも、それを俺が受け入れたことも言えない。
言えないことだらけで、全く繋がらない俺の話。それを幸は真剣に聞いてくれる。途中で遮ることなく、変に質問もせずに黙って聞いてくれる。
「リカちゃんが2日帰ってこなくて、でもそれは仕事だったらしくて。頭冷やしたかったから連絡もしなかったらしいけど、なんか納得できない」
「そりゃそうやな。ほんで?」
「あいつまだ機嫌悪いんだよ。俺が鹿賀に優しくしろって言ったから、とか言って見せつけるようなことしやがる」
思い出すだけで眉間に皺が寄り、唸り声が出る。もうこれ以上は考えたくなくてテーブルに突っ伏すと、そこに幸の指が触れた。
頭の中心の部分、つむじを押されても、それが幸だと思えば振り払う気にはならなかった。
「リカちゃんの考えてることって、今までもわかんなかったけど、今回は特別わかんない。なんだよ、慧君が言ったんだろって笑いながら言われても意味わかんない」
「んー……それは、そのままの意味ちゃう?ウサマルが優しくしてあげって言ったから優しくする、ってこと」
「それ変じゃね?誰かに言われたからじゃ、気持ちこもってないじゃん」
「だって、こもってないやん。今までもウサマルに甘かった彼女ちゃんなら、今回だってウサマルがお願いしたこと優先するやろ」
全くもってその通りだ。リカちゃんは俺が言ったから従ってくれているだけで、別に鹿賀の為を思ってじゃない。それなのに俺に冷たくするから気に入らない。
俺は今までみたいな感じで、でも少しだけ鹿賀のことも受け入れてほしい。それなのにリカちゃんは、わざと極端なことをする。
『慧君が優しくしてやれって言ったんだろ』って笑って、俺への気持ちを鹿賀へと分けようとする。
「なんで伝わんないんだろ。鹿賀に優しくするからって、俺の分を減らす必要なくね?」
抱えている不満を幸にぶつければ、触れていた指が離れていった。それを少し寂しいと感じてしまうのは、色々なことが上手くいってないからかもしれない。
歩は機嫌が悪いし、リカちゃんは変だし、鹿賀も鹿賀でなんとなく暗いし。それを俺にぶつけてこられても、正直困る。
「ああ……疲れる。みんな勝手におかしくなったくせに、なんで俺に言ってくるんだよ。いや、実際は言われてないんだけど、明らかに俺に向けて何か言いたそうな顔する……もうやだ、ただでさえ課題で追われてんのに、そんなことまで構ってられるか!」
苛々が収まらなくて、髪をぐちゃぐちゃに掻き乱す。すると隣の幸がストップをかけてくれ、乱れてしまった髪型を元に戻してくれた。
「こら、ウサマルが自棄になっても意味ないやろ」
「わけわかんないんだよ。また俺が悪いのか?!」
「別に悪いとは思えへんけど……。でも、ウサマルの言ってることは少し矛盾してる気もする」
「どこが?!」
「どこがって、それは……─んぐ?!」
幸の言葉を飲みこんだ手。顔の下半分を覆ったそれは大きくて、色んな意味で邪魔で仕方ない。
「幸、お前は慧に甘すぎ。たまには自分で考えさせなきゃ、こいつが成長しない」
こんなタイミングで帰ってきた歩が邪魔で仕方ない。
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