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「俺の行動の全てには必ず慧君がいる。慧君の邪魔をする者は、自分自身ですら許さない」
言い切ったリカちゃんが「重たいよな」と自嘲する。そんなの今更だと思いながらも、最近あまり感じることがなかったから嬉しい。
相変わらず重たいリカちゃんに安心するなんて、俺も相当弱っていたみたいだ。
「だから慧君が正しいと思うならそうすべきだし、それが自分の意思と反していても俺が優先するのは、常に慧君」
頭にあった手が降りてきて、俺の手の甲に触れる。もう片方もそれに寄り添い、両手を包まれた。
そっと包み込むリカちゃんの手。少しだけ大きくて、昔は遠いと感じていたそれ。
今は……よくわからない。
「それでも、慧君が傷つく可能性があるなら全力で止める。たとえ怒られても嫌われても、罵られたとしても止める」
俺を包み込むリカちゃんの手に力が入る。ギュッと強く握られ、ほんの少し近くなった。
「今回がそうだった。鹿賀はいつまでも隠し通せるほど器用ではないし、気丈でもない。いつか必ずボロが出て、それを知ったら慧君は言っちゃうだろ?」
「言っちゃう…って何を?」
「なんで初めから話さなかったんだって。俺はそんなに信用ないのかって鹿賀を責めて、その後に後悔する。慧君は怒ってから考えて、ちゃんと答えを見つけられる子だからね」
リカちゃんに言われて納得した。
何も知らないまま過ごして、何かのキッカケで鹿賀の秘密を知った時。俺はきっと鹿賀を責める。そして歩やリカちゃん、幸に愚痴を聞いてもらうんだろう。
その光景が想像できて頷くと、リカちゃんも頷いてくれた。まるで、それが正しいと教えてくれるみたいに。
「慧君は優しいから。相手を責めた後、自分も傷つく優しい子だ」
慰めるかのように優しく肌を撫でる指。傷ついたんだろうって、労わってくれるような温もり。
俺にそれを受け入れる資格は……本当にあるのだろうか。
鹿賀には鹿賀の事情があって、簡単には言えないことがある。言いたくても、言えない理由もある。
それは今回のリカちゃんが同じで、そして俺はやっぱりリカちゃんを責めた。
怒って酷いことを言って、それを拓海と幸に相談して…そして今リカちゃんと話して知った。そして後悔してる。
でも、傷ついてはいない。傷ついたのはリカちゃんだ。
「俺、今言われたことをリカちゃんにしたんだけど。でも全然傷ついてない」
リカちゃんの顔が見れなくて俯いて言えば、撫でていた指の動きが止まった。きっと呆れられたんだと思う。
だって、俺は『優しい子』じゃないから。
リカちゃんが言う俺と現実の俺が重ならない。リカちゃんが言っているのは、リカちゃんの理想の『慧』な気がして不安になる。
「俺はリカちゃんを責めて、リカちゃんが悪いって言ったけど……自分は全然傷ついてない」
──本当の俺は、そう言ってもらえるほど良い子じゃない。必死に理由をつけて、自分だけが悪いわけじゃないって言い続けてる。
リカちゃんが語る『慧君』は俺のことじゃない。
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