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それほど久しぶりではないはずなのに、昂った気持ちは止まらない。自分からも迎えに行った俺は、リカちゃんの舌にそれを絡ませる。すると、俺の動きよりも深く執拗に求められて、どんどん濃いものに変わっていく。
「リ、カちゃ……っ、ん、リカちゃん」
「ん?なに、慧君」
「やだ、待って……待ってじゃな……もっと、もっと」
『もっと』を求めると、俺の求めたよりも強い要求がくる。
俺が応えられなくてもリカちゃんはリカちゃんで、自分のしたいように動いた。けれど、それは俺が本当に欲しかったものだから甘んじて受け入れる。
濃厚すぎるキスは終わりを知らない。どんどん覆いかぶさってくるリカちゃんと、どんどん引き寄せる俺の力が相まって、背中がソファに触れた。
目の前がリカちゃんで一杯だ。周りの景色も、外の光もわからないぐらいリカちゃんで一杯。それが嬉しくて頬が緩む。
「慧君、なんだか嬉しそうだね」
「別に……そう言うリカちゃんこそ、すげぇ嬉しそう」
「それは当然かな。目の前に慧君がいてくれて、慧君に触れて、慧君の匂いがする。何もなかった仕事部屋に慧君が来てくれただけで、まるで天国みたい」
「大げさすぎだろ。バカじゃねぇの」
照れて顔を背けると、すかさず追いかけてきたリカちゃんが鼻の先にキスをした。
「慧君が慧君らしくいられるように、慧君の思った通り行動できるように。それを考えて過ごしてきたけど、慧君に触れない毎日は地獄だった」
「自分から触らないって言ったくせに」
「そうなんだけど。あの時は心も身体も慧君不足で、慧君を見るだけで苦しくなるし……でも慧君のいない生活なんて無理だし。わかる?」
「わか……るわけ、なっ……い」
「慧君の声を聞いて慧君の匂いを嗅いで、すぐ傍に慧君がいるのに何も言えない。慧君と何もできないなんて、俺にとっては死んでいるのと変わらない」
わかんねぇよって意味と、どれだけ人の名前を呼ぶんだよって気持ちを込めてリカちゃんの頬を抓む。
するとリカちゃんは少し驚いた後、力の抜けたように笑った。
「慧君があの赤毛を選んだらどうしようかと思った。歩には格好つけたこと言ったけど、もし本当にそうなったら俺は慧君を連れて逃げてたかも」
「赤毛?ああ、幸か……って、俺は幸をそういう意味で好きじゃない」
「うん。わかってる。わかってるけど、慧君の気持ちが少しでも移るのが嫌。慧君の好きは俺だけのもの」
赤いものを見つける度に壊しそうだったと笑ったリカちゃんは、結構危ないやつだ。言葉にしないその裏側で、何を考えているかなんて、わかったもんじゃない。
それでも、それだけ思われていることに悪い気はしないから「うん」と頷いてリカちゃんを抱きしめる。忍び込んだ学校で、仕事中の教師を相手に何をしているんだって思われるだろう。
思われたとしても、注意されたとしても別に構わない。
「リカちゃん、もう1回」
ん、と唇を突き出せばリカちゃんの顔に花が咲く。蕩けた黒い目がゆっくりと細まって、降り注ぐ影が次第に大きくなる。
「慧君……慧君。慧、慧、慧君……慧君」
「うざいんだけど」
「慧君やっばぁ……もう可愛い。可愛くて、本当たまんない。慧君が可愛すぎて死にそう」
「だから呼び過ぎだってば。早く来いよ」
軽快なリップ音を落として唇が触れる。そんなんじゃ足りないとせがむ俺の目の前で、リカちゃんはすごく幸せそうだ。
「慧君、なんだか今日の慧君はすごく素直で嬉しい。もちろん普段の強気な慧君も好きだし、慧君だったら俺は何でも大好きなんだけど」
「あ?ああ……まあ、リカちゃんしか無理だって実感したっていうか、痛感したばっかりというか……」
幸に押し倒された時のことを思い出して言うと、リカちゃんの蕩ける微笑みが凍りついた。
「慧君、今のどういうこと?慧君のその顔つきから察するに、何か嫌な予感がするんだけど」
「な……何でもない。別にリカちゃんが気にすることないから!」
「気にするに決まってるだろ。俺が気にするのは慧君のこと、考えるのも慧君のこと、心配するのも慧君のことなんだって」
「だから名前呼びすぎ……」
なんで調子に乗ってしまったんだろう。それを考えてももう遅くて、リカちゃんは「慧君、ねぇ慧君」と詰め寄ってくる。
この短時間のうちに、何度名前を呼ばれたのか数えるのも怖いけど、その顔はもっと怖い。
「慧君、素直に言った方が慧君の身の為じゃないかな」
「……怒らない?」
「それは慧君次第だけど」
その顔はもう怒ってるだろ、なんて言えない。俺にごまかされるほど甘くはないリカちゃんは、微笑みながらも静かに怒りを燃やす。
「怒らないって約束しろよ」
「…………わかった、慧君がそう言うなら」
「あと、嫌いにならないってのも」
「大丈夫。俺は慧君が誰かを殺したとしても、絶対に慧君を嫌いになんてなれない」
それなら、と観念して幸との一件を話す。幸の過去は言うべきじゃないとわかっていても、それを抜きには話せなくて全てを。
するとリカちゃんは被さっていた身体を起こして……
「慧君──いや、慧。とりあえず、そこに正座」
懐かしい先生モードで説教してきやがった。怒らないって約束したのに、リカちゃんの嘘つき。
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