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ああ嫌だ。何が嫌って、まんまと策に溺れた自分も、学校でそんなことを考えているリカちゃんも。それが出来てしまうだろうっていう理由のない自信が嫌だ。
「普段自分が働いてる場所、慧君と初めて会ったこの場所で慧君を抱く。うん、やっぱり職員室より、この教室の方が絶対に良い」
数回頷いたリカちゃんが、俺の耳の裏に唇を寄せる。温かい吐息がかかったと思ったら、水っぽいものが触れた。
体温で温められていたリカちゃんの舌だ。それが小刻みに揺れているのは、リカちゃんが笑っているからだろう。
「思ったよりも早く夢を叶えられた。日頃の行いが良すぎるからかな」
そんなこと絶対にない。それに『叶った』じゃなく『叶えた』って言うような意地の悪いやつに、神様は優しくしないはずだ。
それなのに、俺の知ってる神様は強いやつの味方をしやがる。
腰が抜けた俺じゃなく、嬉嬉として人の身体を撫でる……リカちゃんみたいなやつの味方を。
教卓に凭れるようにして立たされていた身体が浮く。その細い身体のどこにそんな力があるのか、俺の両脇に手を入れたリカちゃんが抱き上げた。
ふわりと浮いた身体が落ち着いたのは教卓の机の上。そこに静かに俺を座らせたリカちゃんが、机に手をついて首を傾げる。
「教卓の上からの見晴らしはどう?」
「薄暗くて何も見えねぇし」
辛うじて入ってくる月の光は、ぼんやりと周りを照らすだけ。しっかりと見えるのはリカちゃんの顔だけだ。
用意周到としか思えない状況。たまたま最後にたどり着いたのがこの教室だったなんて、そんな偶然を俺は信じない。
「リカちゃん、これ狙ってただろ?」
「狙ってた?何を?」
「初めからこの教室に俺を連れ込む気だったんだろ?!」
教卓の上に座らされた情けない姿で睨みつける。唯一の救いは、視線の高さが近いってことだけだ。
これで見上げなきゃならなかったら、情けなさはもっと酷かっただろう。
「慧君には、俺がそんなに計算して動いてるように見えてるんだ?」
「計算してるって言うより、俺を嵌めやがったなって思ってる」
「やっばぁ……ここまで疑われるなんて、すごく心外なんだけど。でも睨んでる慧君も可愛いから許してあげる」
何よりもお前の頭の中が断トツでヤバいだろって思うのに、素直すぎる心と身体が熱くなってドキドキして、それを言わせてくれない。
悔しい。何も言い返せないのが悔しくて、それでも。
月明かりに照らされるリカちゃんは、息を飲む程に綺麗だった。怖いと思ってしまうぐらいに。
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