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「リカちゃん!!いい加減にしろ!」
羞恥ばかりのトイレタイムを終え、宅配のお兄さんに凝視されつつピザを受け取って、食べにくいと文句を言いながらピザを食べた。その間もずっと手は繋いだままで。
俺だって男だから、1度口にしたことは守りたい。トイレを乗り越えたんだから、最後まで頑張りたいと思う。
でも、思っていたとしても現実的に不可能なことは当然起こる。
「今日はずっと手を繋いでおくって言ったのに。慧君の嘘つき」
すりガラス越しに聞こえるリカちゃんの声。恨みがましいそれは、嘘つき嘘つきと俺を責める。
「仕方ないだろ。どうやって手を繋いだまま服脱ぐんだよ」
「着たまま入ればいい」
「それじゃ風呂に入れねぇだろうが。お前はバカか」
俺がエプロンみたいな袖のない服を着ているならまだしも、今日着ていたのは普通のTシャツだ。手を繋いだままじゃ、そんなもの脱げるわけがない。
それなのにリカちゃんは、まだ嘘つきと言ってきやがる。だんだん苛々してきて、もう何も返事しなくなった俺に気付いたのか、その声が止んだ。
僅かに開いた扉の隙間から入ってきた手。袖を捲った、リカちゃんの白い腕だ。
「もう脱いだんだから繋いで」
「は?」
「今なら繋げるだろ?早く」
早くと言われても、今は風呂に入っている状態だ。髪を洗ったところで、まだ身体が残っているのに。なのにリカちゃんは、早く早くと急かしてくる。
本当に面倒くさい。こうして求められるのは悪い気はしないけれど、今は面倒くさい。
「やだ」
「なんで」
「やだから、やだ」
「それが嫌だ」
リカちゃんはいつもは嫌味なぐらい大人ぶっているのに、こういう時だけ子供になる。それがまた面倒くさい。
「ああもう!!ごちゃごちゃうるせぇ!!」
勢いよく扉を開いて怒鳴る。開いた先には、てっきりニヤニヤと嫌な笑い方をしているリカちゃんがいると思ったのに、そこにいたのは全然違った。
扉の傍に座り込み、不貞腐れる大人。俺に差し出した右手とは反対の手で頬杖をし、拗ねている大人だ。
それは嫌味なんかじゃなく、偉そうでもなく、からかっているわけでもなくて。
「今まで離れてばっかりだったから、少しでも慧君に触れていたいのに」
俺はどうかしてる。こんな姿を見て、情けないと思うどころか可愛いと思ってしまうなんて。
本当に俺はどうかしてる。
「わかったよ……ほら、入れよ」
自分に向けてのため息を心の中で吐き、リカちゃんを中へと促す。
「どうせなら一緒に入ればいいだろ。どうせお前が入ってる時、俺も同じことさせられんだし」
ふわっふわに、それはもう嬉しそうに笑ったリカちゃんが浴室へ飛び込んでくる。服を脱ぐこともせず、そのままの姿で入ってきて、ぎゅっと強く抱きしめる。
出しっぱなしのシャワーがリカちゃんを濡らし、服が肌に張り付いても気にしない。今日着ている服も高いはずなのに、それが駄目になろうと気にしない。
逃がさないと言っているようで、逃げるなと頼んでいるような。そんな抱きしめ方だった。首元に顔を埋めたリカちゃんの背中を撫でると、その力はもっと強くなる。
強くなって、でもまだ足りない。もっともっと、と求めているのは俺の方なのかもしれない。
「リカちゃん、服ちゃんと脱がなきゃ」
「うん、慧君も手伝って」
濡れた布地が肌に張り付いて脱がせにくくて、苦労する俺にリカちゃんが笑う。それを睨んで抗議すると、謝る代わりにキスが落ちてくる。
続く口付けとシャワーの水滴で息苦しくなれば、どちらともなく笑って……また、吸い寄せられるように唇を合わす。
穏やかで幸せな時間。しばらくぶりの、2人だけの空間。
「やっばぁ……慧君、もう我慢の限界。慧君のなかに入りたい」
そしてお決まりの台詞に、お決まりの展開がやって来て思うのは。
「リカちゃんって、本当にリカちゃんだよな……」
リカちゃんは期待を裏切らないってこと。
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