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一体いつ、どこで何があったのかは知らない。きっと聞いても教えてくれないし、しばらくすれば何もなかったようにごまかされてしまう。
だから何も聞かずに必死で考えた。
昼過ぎまでは普通だったけれど、普段から溜め込むリカちゃんのことだ。昨日何かがあったのかもしれないし、今日かもしれないし、俺の知らないずっと、ずっと前かもしれない。
こういう時、リカちゃんなら相手の欲しい言葉を言えるんだろう。相手の不安も不満も、どんな感情だって受け入れてしまうんだろう。
俺にはそれができない。自分で考えろって言われても、わからないものは仕方ないって開き直ってしまう。
「リカちゃん、俺は」
その続きが出てこなくて口籠ると、リカちゃんの手が俺の頭に乗った。数回撫でられるその動きは「ごめん」と「大丈夫」と「気にしないで」だろうか。
シャワーを止めたリカちゃんがシャンプーのボトルに手をかけ、髪を洗い始める。風呂に入っているのだから当然の行動でも、まだリカちゃんが何かを悩んでいるのがわかる。
だって、リカちゃんは上の服を脱いだだけで下は履いたままだから。熱気のこもる室内も、石鹸の匂いが充満している空気も普段通りなのに、リカちゃんだけが違う。
そんなリカちゃんを黙って眺める。丁寧にトリートメントまで終え、やっと俺の視線に気付いたリカちゃんが首を傾げた。
「リカちゃん。下、まだ履いたままだけど」
「下?ああ……脱ぐの忘れてた」
さっきまで髪を洗っていた指がボトムの前にかかり、重たい布を強引に開く。肌に張り付いて脱ぎづらいのか、なかなかに苦戦している手元に俺も手を伸ばした。
「慧君、自分でするから。大丈夫」
軽く微笑んで拒絶するリカちゃんに俺が向けたのは、鋭く睨む目だ。
その『自分でする』が、服を脱ぐことだけじゃない気がして。
その『大丈夫』が、嘘じゃない気がして。
そう思うと止まらない。黒くてドロドロとした何かが、胸の中を激しく動き回って溜まっていく。どんどん溜まって、いっぱいになる。
なんとかしてやりたいと思う。何が原因かはわからなくても、俺だって男だ。自分の付き合っているやつが不安なら、俺がそれを取り除きたいと思う。
そう思うと同時に苛々する。
俺以外のものに影響されるリカちゃんが。
俺以外の誰かに影響されるリカちゃんが。
俺じゃなく俺以外の言動を受けとめてしまうリカちゃんが。
無性に俺を苛々させる。
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