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いつの間にか意識を飛ばしていた俺は、翌日の昼前に起きた。用意されたクロワッサンを頬張り、用意されたジュースを飲んで、用意したやつを正座させる。
ダニングテーブルから少し離れたところに、膝を揃えて正座したリカちゃんは少し項垂れていて、ちょっと可哀想な気がする……わけはなく。
「てめぇ、俺が大学休めないって知ってるよな?」
「もちろん」
「それなのに昨日のアレは何だ?俺、途中から記憶ないんだけど」
やたらと激しく、やたらと執拗だった昨日の夜。いつ終わったのかを覚えていない代わりに、起きた時の身体の痛みは尋常じゃなかった。
身体だけじゃない、喉も痛くて声が掠れている。
「リカちゃん」
その声で名前を呼ぶと、リカちゃんが顔を上げる。俺がこんなに疲れているというのに、その表情はすっきり晴れやかで、それが更に腹立つ。
「大学、どうしてくれんだよ」
「それなら午前中の分は蜂屋に代弁頼んであるよ。午後からは1つ出席すれば大丈夫だし、もちろん送るし」
「……なんで俺のスケジュールを把握してんだよ。お前怖ぇよ」
「慧君のことを把握しておくのは、俺にとって常識みたいなもんだからね」
正座させられているくせに、堂々と言ってしまえるその思考が何より怖い。昨日の荒々しさとは正反対の、その切り替えようが本当に怖い。
誇らしげに反省するリカちゃんから視線をそらし、壁にかけられた時計を眺める。朝なんてとっくに過ぎて、もう正午を指しそうな針にため息しか出ない。
リカちゃんの様子が変だったのは俺だって気づいていた。でも何も言えなくて、励ます代わりに自分から誘った……けれど。けれど、だ。
だからって、こんな風に立てなくなるほど抱き潰されるなんて思ってなかった。朝起きて自分の異変に気付いた時、俺がどれだけ後悔したかは言葉で言い表せない。
それでも落ち着いたリカちゃんを見ると強くは責めることができなくて、俺がとった行動は正座をさせるだ。少しはこっちの苦労を知りやがれと、怒鳴った俺にリカちゃんは素直に従う。
綺麗な顔に綺麗な指。ぴんと背筋を伸ばし、俺の機嫌を窺うのは悪くない。後処理をしたのも当然とは言え、悪くない。だからため息が出るんだ。
簡単に許してしまう自分に対して、情けなく思うんだ。
「……それで。昨日はなんで落ち込んでたわけ?」
最後に残していたオレンジを摘まみ、何気ないふりを装う。なんとなく聞いてみただけって演技をし、気になって仕方なかったことを訊ねると、リカちゃんはたった一言「嫉妬した」と答えた。
──は?
ぷちん、と頭の中で何かが切れた。
「嫉妬?!たったそれだけで、俺はこんなになるまで好き勝手されたのか?!」
「それだけって。俺の知らない慧がいて、俺の知らないところで噂されていて、俺の知らないやつがお前を見つめてたら嫉妬ぐらいする」
「リカちゃんだって、俺の知らないやつにチヤホヤされてるだろ!俺知ってるんだからな、お前が先週告られたって!!」
「ああ……まあ……って、なんで慧君が知ってんの?」
なんでって、そんなの1つに決まってるだろ。リカちゃんが日頃どんな風に学校で過ごしているか、俺に教えるやつなんて1人しかいない。
「鹿賀が言ってた。交流会かなんかで知り合った他校の女教師に言い寄られてて、すげぇ迫られてたって。デカい胸を強調されても、全く揺るがない先生って鋼の理性ですよねって言ってたのに……」
言葉を止めて見るのはリカちゃんの大事なところ。昨日これでもかと活躍させやがった、リカちゃんのリカちゃんだ。
「どこが鋼の理性だよ。鋼どころか豆腐より弱ぇだろ」
ハッと鼻で笑って顔を背ける。たかが嫉妬したぐらいで瀕死にされていたら、俺はまともに生活できやしない。
それでも正座だけで済ませてしまったのは、巨乳女じゃ反応しないリカちゃんが、俺が相手だと歯止めが利かないから。
俺にしか反応しないリカちゃんが可愛いだなんて、口が裂けても言えるもんか。
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