アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
242
-
窓の外に見える黒と金色の頭。それを眺めながら、幸が推理ショーを始めた。
「ここに来たら、ウサマルだけやなくて歩もおるもんな。一石二鳥、無駄足は踏みませんってやつか」
「なんでわざわざ歩に会う為に?歩に用事があるなら、家に行けばいいのに」
「そんなん理由は簡単やろ。歩をウサマルのとこ連れて行こうとしたら、歩に逃げられる。逆にウサマルを歩のとこ連れて行こうとしても、ウサマルに逃げられる。それなら2人一緒に捕まえてもたらいい、って感じちゃう?」
「2人一緒に、って俺と歩を?」
どうしてリカちゃんがそうするかは、嫌でもわかるけど。だからって、ここで俺が逃げてしまえば意味がない。
でも、俺にはそうできない理由がある。
万全とは言えない身体、外で待ち構えているリカちゃん……そして、隣にいる元味方の赤毛。
その赤毛の腕が肩に回され、逃げられないようにしっかりと固定される。それはもう強い、強すぎる力で、思わず助けを求めるようにリカちゃんを見た。
他人が俺の肩を抱くなんて、リカちゃんなら絶対に嫌がる。だから気づいたリカちゃんが、視線で幸に「やめろ」と言ってくれると思っていたのに……いたのに!
目に映るのは同じように歩の肩を抱き、なんとか宥めようとしているリカちゃんの様子。
やっと黙った歩に満足したのか、リカちゃんがこちらを向いた。
そして小さく頷く。俺に向けてじゃなく、幸に向けて。
「ここでウサマルにチューしたら、俺思いっきり殴られるやろな」
「リカちゃんがそうする前に俺が殴る。っていうか、もう殴りたくて仕方ない」
「でもほら、向こうも捕まってるわけやしな。いくら歩でも、兄ちゃん相手に暴れたりはせんやろ。落ち着いて話して、早よ仲直りしてまい」
「お前、俺の話聞いてたか?とりあえず1発殴らせろ」
ああもう嫌だ。簡単にリカちゃんに寝返った幸も嫌だし、こんな時だけ大人になるリカちゃんも嫌だし、俺様のくせにブラコンで逆らえない歩も嫌だし。
そんなことを考えながら、逃げたい逃げたいと願って、逃げられない逃げられないと焦って。それでも、気持ちに反して足は性悪兄弟の元へと向かう。
がっしりと肩を抱かれた俺に誰も声をかけてくれず、こんなことなら、友達の1人や2人作っておくべきだと後悔した。
とうとう不機嫌の頂点を突破し、一言も喋らずたどり着いたベンチ。俺を迎えるのはリカちゃんと、それに襟首を掴まれて険しい顔をしている歩。
不穏な雰囲気の中、リカちゃんがにっこりと笑う。
「お帰り慧君。今日も勉強ご苦労様。新しいことを覚えて、さらにレベルアップした慧君も最高に可愛くて大好き」
あからさまに機嫌をとろうとするリカちゃんを、これでもかと睨みつける。なんで俺はこんなやつを選んでしまったのか、一度じっくり考えるべきだと思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1059 / 1234