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at Last-5 ≪ side:Rika ≫
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明日は喧嘩するかもしれない。
1ヶ月後には、一緒にいることを嫌だと思うかもしれない。
でも、10年後にはきっと2人揃っていると言い切れる。どれだけ嫌なことがあって、許せないと腹を立てたとしても、自然と隣をあけて待っているだろう。
だって、君がいなきゃ上手く眠れない。
君がいなければ何かを食べて美味しいと思うことも、過ごす日常を楽しいと笑うこともない。
慧がいないと、呼吸する意味すら見出せない。
人間が心臓を止めると死ぬのと同じよう、俺は兎丸慧がいないと死んでしまう。
頭が考えることをやめて、身体が動くことを終える。たった1人がいなくなるだけで、全てが白紙になる。
ずっと慧君の為に生きると誓ってきたけれど、少し前から意味合いが変わってきたことに気づいていた。けれどそれを口にするのは間違っている気がして言えなかった。
でも、今なら言える気がする。
「慧君、俺は慧君の為に生きてる」
いつもと同じ声のトーンで、いつもと同じ雰囲気で、いつもと変わらない台詞。それに、今からは新しい意味を重ねて伝えたい。
「慧君の為に生きてる、それは間違いない。でも、もう1つ言わせてほしい」
「もう1つ?」
訝しげに見上げてくる視線。これを告げたら重たいと呆れられるだろうか、それとも鬱陶しいと嫌そうな顔をされるだろうか。
どちらでも可愛いし、どちらも見てみたい気がする。そう思う自分が少し痛いな、と今さらなことを考えて。
「リカちゃん?」
なかなか口を開かない俺に焦れた慧が、急かす。そんなに急かさなくても、これからは嫌というほど聞かせてあげる台詞。しっかりと目を合わせて、はっきりと告げたい。
「俺は慧に生かされてる。明日も明後日も、1年後も10年後も、俺を生かせるのは慧君しかいない」
痛いと笑ってくれてもいい。バカなのかと呆れてくれてもいい。
冗談半分にしてほしいような、ちゃんと本心だとわかってほしいような、相反する気持ちを込めて言った台詞。それを、慧は正面から受け止めた。
噛み砕くように小さな声で「俺に、生かされてる」と復唱する。
そして──。
「そんなの、今さらだな」
満面の笑みで応えてくれた。
また心に幸せのピースが落ちてくる。慧君と出会ってから次々と降り注ぐそれは、いつしか『獅子原理佳』という1人の人間を作ってくれるのだろう。
慧君が教えてくれた、自分らしく生きた証が完成する日は……まだまだ先の話だ。
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