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9.ヒトヅマ
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「っていうか、リカちゃんに聞きたいんだけど。これさ、味はどうでしたかって感想聞かれたらどうすんの?」
初対面で手作りを渡す人だ。きっと自分の手料理に自信があって、周りからの評判も良いのだろう。そうじゃなきゃ、こんな自信過剰なことはできないと思った。
だから感想を聞かれてもおかしくないし、それを求めてきても変じゃない。いくらなんでも本人に向かって「不味かった」なんて言う人はいない。
褒められることがわかっていて聞くなんて、バカらしいとは思うけれど。相手が女ということもあって、さらに偏見が強くなってしまう。
そして、それを汲み取ってくれるのがリカちゃんだったりするのだ。
「慧君は変わったことを聞くね。そんなの、答えは1つしかないでしょ」
「1つって?床に落としたとか、適当なこと言ってごまかすつもりか?」
ゴミ箱に捨ててしまったものを、今さら食べるわけにもいかない。ではどうするのかと聞いてみると、リカちゃんは何てことないかのように答える。
リカちゃんにとって『当然』であり『1つだけ』の選択肢だ。
「あんなに手の込んだ物、久しぶりに食べました。すごく美味しかったですよ……これで問題ない」
「結局は嘘つくんじゃねぇかよ。しかも嘘だってモロバレの」
「嘘と誤魔化しは紙一重だからね。どんな食材を使ってあったのかは確認したし、後は適当に合わせて褒めておけば不可はないはずだ」
「それ、性格悪すぎじゃね?すげぇ計画犯って感じがするんだけど」
「何とでも思ってくれて結構。そもそも、初対面で手料理なんて渡す気が知れない。ご主人が出張だとか、引越してきたばかりで友達がいないだとか……聞いてもいないことをベラベラと話す、そんな女の手作りなんて程度が知れてる」
珍しくあからさまな毒を吐き、深いため息をついたリカちゃんがソファへと沈む。利き手の左手で両瞼を覆う仕草が、そんなに疲れたのかと心配させるほどだ。
「人妻好きな男の気持ちが全くわからない……」
「は?リカちゃん急に何言ってんの?」
「ほら。学生の時に看護師かCA、人妻か教師かどれが好きだって話しなかった?」
「してねぇよ。お前どんな学校生活送ってたんだよ」
リカちゃんがそんな話をしたのなら、そこには当然桃ちゃんや美馬さん、星兄ちゃんもいたはずだ。みんなが何を選んだのか気になるけれど、今は聞くべきじゃないだろう。
……けれど、やっぱり気になる。気になるものは気になってしまう。
「ちなみに、リカちゃんはどれ派?」
正直すぎる口から滑り落ちるように言葉が出てしまい、慌てて顔を背けるけれど。
俺よりも頭も運動神経も良い性悪男は、持ち前の機敏さを発揮しやがった。俺が顔を背けるよりも早くこちらを向き、にやにやと笑っていたのだ。
「慧君かーわいい。そんなに俺の性癖が気になる?」
「別に。全然。ちっとも。全く。それより明日の天気の方が気になって仕方ない」
「ふぅん。じゃあ俺が極度の人妻好きで、人妻ってだけで興奮する男だったらどうするわけ?」
「それだけで興奮するなら、今すぐに病院行って来い。元々おかしな頭も診てもらえて、一石二鳥じゃねぇかよ」
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