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24.クズと俺と女子高生
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薄汚れた魚こと魚住は、それからも嬉々として昨夜のことを話した。
こちらは何も聞いていないのに、どんな話をしてどうやって持ち帰ったとか。全くもって興味がない俺の様子など気にもせず、自分の言いたいことを言いたいように話す。
それでも俺の苛々が爆発しないのは、魚住がネタのように話すからだ。まるで作り話のように、時々大げさに言ったり、わざと嘘を混じらせてみたり。
魚住は俺の知り合いの中でも断トツに軽くて、それは体型じゃなく性格のことで。拓海みたいに明るいのとはまた違う、どこかつかみどころのない男だと思う。
当たり障りのない話を、重要なことのように話すのが上手い。聞かれても支障がないような些細なことを、大事な話のように語る。
リカちゃんと似ているのか、魚住も器用な男だ。
「……でさ、俺的には付き合うなら女子高生より女子大生の方が怖いんだよな。ほら、高校生って恋に恋するって言うか、憧れと恋愛をミックスさせたりするだろ?その点、女子大生は生々しくなるからさぁ」
一体いつからそんな話になったのか、今の魚住は女子大生の怖さを俺に語っていた。そんなもの語られても、俺に女の子の知り合いなんていないのに。高校生でも大学生でも、特別関わることなんてないのに、だ。
「いや、知らないけど。というか、高校生とどうこう……って犯罪だろ」
未成年を相手にするなんて、いくら塾の講師と言えども指導する身として駄目だと思う。
それなのに。
「兎丸……お前、相変わらず頭堅いな。派手な顔して遊んでそうなくせに、頭の中身が古すぎる。今すぐアップデートした方がいいって」
「顔と考え方は関係ないだろ。俺からすれば、高校生相手にクソみたいな妄想してるお前の頭の方が問題ある」
「それが妄想じゃないんだよな。実は俺さ、先週、生徒に告られちゃった」
きゃっ、とわざとらしい声を上げた魚住が両頬を手で包む。照れた素振りを見せ、けれどその口元はニヤニヤと緩んでいた。
「生徒に告られ……って、お前…まさか手は出してないよな?!」
汚れに汚れた魚住だ。理性よりも欲望が勝つ魚住だ。好きな物は女の子、好きなことは女の子と遊ぶこと、好きな時間は女の子と一緒にいる時間……そんな欲望まみれの男だ。
嫌な予感がよぎり、それを確認すべく問いただす。すると魚住は照れたふりを止め、呆れたように俺を見た。
「あのな。いくら俺でも大事な金づるに手を出す程、見境なくないから。俺にとって塾の生徒は女じゃなくてマネー、お金。この意味わかる?」
「金づる。金……お前は期待を裏切らないクズだな」
「褒めてくれてありがとう。兎丸に褒められると、それだけで1日がラッキーに過ごせそうな気がする」
「全く。欠片も。ちっとも、褒めてないんだけど。寧ろ貶したはずなんだけど」
クズと呼んだのに笑う魚住を気持ち悪いと思いつつ、顔を男から前へと向き直す。すると丁度、塾が入ったビルが見えてきて、無駄に大きな看板が俺たちを迎えてくれた。
それの下。玄関の自動ドアの脇に立ち、短くしたスカートから惜しげもなく素足を晒した女子校生が1人。並んで歩く俺と魚住を見て、嬉しそうに笑う子が1人。
「先生!うおずみ、先生っ!」
もちろん、その笑顔も明るい声も俺には向かない。つくづく、自分のコミュニケーション能力の低さに泣きそうになった。
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