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37.優しい命令
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寛ぐ場所であるリビングを無視し、そのまま寝室へ。ベッドに座ったリカちゃんを跨ぐように膝立ちになった俺は、いつもは見上げなきゃダメな視線を今は落としている。
リカちゃんを見ていると、美人ってやつはどの角度から見ても完璧なんだと実感する。右も左も上も下も、いつ、どこから見られても困らないのが美人の必要条件だ。
「そういえば、慧君から迫られるのって久しぶりだね」
リカちゃんは楽しそうに言ったけれど、それは少し間違ってると思う。だって、俺から誘ったのは今までに数えきれるほどしかないから。
いつも受け身でいつもリカちゃんにされるがまま。俺はずっとそれで良いと思っていたし、こうしてる今だって、次はどうして良いのかわからなくて困ってる。
でも、今日だけは頑張らないといけない。ここでやめたところでリカちゃんが出かけるなんて、本当は思っていないけれど。それでも、大丈夫だと自分を納得させる為に頑張らないといけない。
小さな心配ができたなら早く潰さないと。じゃないと明日は今日より不安になって、明後日にはもっと、来週にはもっともっと気になるならかもしれない。
「リカちゃん、俺……」
膝立ちのままリカちゃんを見つめる。黒くて長いまつ毛が少し震えて、視線が合う。
俺を映す瞳がすっと細くなって、笑われた。
「慧君からキスして」
言葉では頼んだくせに、リカちゃんの雰囲気はそうじゃない。それは、この世で1番丁寧で、でも絶対に拒否できない命令だった。
「ほら慧君、早く」
優しい声で急かされて身体が動く。だんだんと顔が近づいていき、まず吐息が触れ、次に何も見えなくなる。最後には何も聞こえなくなる。
「……っ、ん」
触れた唇は冷たい。乾いた感触はあまりなくて、程よい弾力がある。俺が離れると、リカちゃんはまだ笑っていた。
「これだけ?」
くいっと上がった眉に、正直イラッときた。
「うるさい。今からしようと思ってた」
その挑発に簡単に乗ってしまった俺は、誘われるがままに舌を伸ばした。簡単に受け入れてくれた口内は、外とは真逆に熱く、そして柔らかい。
こんなのダメだ。溶けてしまう。
頭の中が、触れる肌が。そして不安が。全てが溶けてしまいそうな錯覚。それが心地よくて止まらない。
「ふ、ん……っは」
鼻で息をすることも、息継ぎのタイミングに唾液を飲み込むことも慣れた。相変わらず変な声は出てしまうけれど、苦しくなることはもうない。
ただただ、気持ち良いと思う。エッチや抱きしめられること、手を握ることとも違う特別な気持ち良さがある。
「リカちゃんっ、リ……ん、ぅ」
何も言われないってことは、どうやら今のところは俺に主導権を握らせてくれるらしい。こうして応じてはくれるけれど、リカちゃんからは動かない。
「んん……はっ……ふ、あ」
リカちゃんの舌先に触れると、絡ませやすいように伸ばしてくれる。表面を擦るよう動かすと、重ねるように包んでくれる。
でも、俺が動きを止めるとリカちゃんも止めてしまう。薄く目を開いて俺の様子を観察し、瞳だけで笑う。
まるで試されている気分だ。
「リカちゃん、ちゃんと……もっと」
「慧君。どうしてほしいのか慧君の言葉で教えてほしいな」
気分じゃない。俺はリカちゃんに試されている。
リカちゃんがずっと笑っているのは、必死な俺を見て楽しんでいるからだった。
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