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44.いっぱい、たくさん(R18)
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軽く伸びをして触れるだけのキスをする。心も身体も満足した今、きっとすごく気持ち良く眠れるんだろう。
でもそれは許されない。まだ俺の身体の奥に潜んで、息を殺して待っているやつがいるからだ。
「ねぇ慧君。余韻に浸ってるところ悪いけど、今度は俺の番だよ」
注意するかのように下から揺さぶられる。その存在感の過ごさは、何度も身体を合わせたのに衰えたりはしていない。
「つっ……どうせ俺に拒否権はないんだろ」
「そうだね。慧君にあるのは拒否権じゃなくて、俺にいっぱい愛されて、嫌というほど可愛がられる権利かな」
「嫌って言ったら止まるのかよ。それなら死ぬまで嫌なんて言ってやらない。リカちゃんなんか、ずーっと今みたいに慧君慧君言ってたらいいんだ」
そうすればリカちゃんは、死ぬまで俺のものだから。あとに続く言葉を口にできたら、どんなに楽だろう。どんなにリカちゃんを喜ばせてやれるだろう。
それなのに結局、今回も悪態をつくだけで終わる。
「いいから早くイけよ。俺もう眠たくなってきた」
「はいはい。じゃあ慧君にも協力してもらわないとね。しっかり俺に捕まって、可愛く喘いでもらえると助かる」
「後半のは絶対にやだ。意地でも声なんか出すか」
言われた通り必死に抱きつけば、楽になるはずだったのに、動きやすくなったリカちゃんはさらにその激しさを増す。さっきまでが手加減されていたんだって、すぐにわかった。
「やっ、あっ……待って、いきなり……激しすぎ」
「でも、慧君は……っ…こうされるの、好きでしょ?」
「好きじゃ、好きじゃな──う……んあっ、リカちゃん待って」
「好きじゃないのに声が出ちゃうんだ?それは変だね、慧君」
内側の壁を抉るように突かれ、埋められたものの切っ先が奥へと届く。昔は毎晩のように抱かれていて慣れてはいたけれど、大人になった今ではこの感覚が懐かしく感じた。
それでも身体は素直だ。そして気持ちも同じ。
「リカちゃんっ、リカちゃん……あ、やだ、もっと。もっと奥まで……やだ、そこばっかり」
嫌だと繰り返すのとは反対に、きゅうっと奥が締まったのを自分自身でわかった。こうして強く抱かれると、とんでもないぐらい心が喜ぶ。
「リカちゃん、リカちゃん……もっと。もっとしてっ」
「く……っ。早くイけって言ったくせに」
「やだやだ。もっと。もっと奥まで……んっ、んん」
「あぁもう……素直な慧君は心臓に悪い。このまま1回出すから……っはぁ」
男が男に抱かれて喜ぶなんて気持ち悪いって思われるだろうけど。でも俺はこの先、誰かを抱くことはできないと自信をもって言える。
そしてできることなら誰かに抱かれることもなく終わりたい。一生をリカちゃんだけで終わりたいって思う。
「気持ち……っ…良いね、慧君。堪らない」
途切れがちになる吐息が、リカちゃんもきちんと感じてくれてるのだと教えてくれる。
それに頷くような否定するような、どっちでもないような反応を示すと、諭すようなキスがこめかみに落とされた。
『言葉にしなくても全部わかってる』
まるでそう言われているみたいだ。
もし言葉に出して「何があっても捨てるな」と言ったら、リカちゃんはどうするだろう。これからはもっと頑張るからと言えば、まだ信じてくれるだろうか。
頑張るなんて誰でも言える。俺も今まで何回も、何十回も言ってきた。
でも結果が出せてなくて、それにイライラして不安になって、リカちゃんに当たってる。リカちゃんから自由を奪おうとする自分を、必死に押し殺してる。
知られたくない。でも知ってほしい。許してほしくて、受け入れてほしい。
最高潮に盛り上がった今なら雰囲気に酔った勢いで言えるかもしれない。そう思って、この流れに任せて口を開く。
「リカちゃん──俺、おれ……っ俺は」
もっと頑張るから。もっともっと頑張って、リカちゃんの隣が相応しい男になって、いっぱい頑張るから。
だから──。
「リカちゃん、リカちゃ……や……ああっ……やだやだ待って、俺はっ」
俺のものから垂れていた透明な粘液がまた白く濁る。堪えきれなくて漏れた白濁は、もう限界だと告げる証で。
「やっ、やああっ──」
決意を伝えるはずがそれは声にならなかった。2度目の絶頂に声は震え、捕まっていた手が離れて……そして。
「慧君。このまま……奥に出す……っ、から」
身体中が熱に支配される。俺は体内にそれを感じながら目を閉じた。勢いを失った今、素直に全てをさらけ出すことは俺には難しい。
いっそのこと、このまま眠ってしまおうと思った。
「慧君、このまま寝ると明日の朝、大変なことになるよ。せめてシャワーぐらいは浴びないと……慧君、けーい君」
エッチの後にリカちゃんの声を聞きながら眠りに落ちるのは、すごく安心する。以前は腰の怠さや喉の痛みが嫌いだったのに、今はそれがあると心が落ち着く。
一時の快感は一瞬にして不安を吹き飛ばす。けれど、それが終わると俺の不安はまた濃さを増し、より深い闇へと落としていく。
だからまた次を求めて、それが終わったらまた次。そのまた次……と、終わりを知らない。リカちゃんが求めてくれなきゃ俺は、自分を見失ってしまうだろう。
俺の存在価値をリカちゃんだけが教えてくれる。
リカちゃんだけが俺を助けてくれる。俺を認めてくれる。
この関係に依存してるのはリカちゃんじゃない。
1人じゃ何もできないのは俺。なんとかして繋ぎ止めようとしてるのも俺。
つまり、依存してるのは俺だ。
いつからこうなったのか、どうしてこうなったのか……どうしたら抜け出せて、どうするのが正解なのか。
わからないまま時間は進み、夜が更けて朝が来る。
そうして新しい1日が始まる。
望んでいたのとは違う日々が始まる。
失敗した代償はあまりに大きい。
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