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73.運命の恋
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魚住と初めて会ったのは、実は塾じゃなかったこと。
前の彼氏と道端で喧嘩している時、仲裁に入ったのが魚住だったこと。
それから塾で再会し、魚住が自分を覚えていてくれたことに運命を感じたこと。
悩みを相談したこと。目の前で泣いたこと。2人して笑ったこと。
そして、自然と好きになっていたこと。
彼女が語る恋の話は、俺にはとても眩しく思えた。よく思い出は美化して覚えているって言うけれど、そのことを差し引いても幸せな毎日だったんだろうとわかった。
でも、やっぱり現実は残酷だ。2人で過ごしたどれだけ楽しかったとしても、魚住は彼女を拒否したんだから。
「魚ちゃんね、初めて声かけてくれた時に私に電話番号教えてくれたんだよ。その時は制服じゃなかったから、多分私のことを高校生だと思ってなかったみたい」
「え、それってつまり魚住にナンパされたってことか?」
「彼氏と喧嘩した女の子なら簡単に落とせると思ったんだろうね。ほら、魚ちゃんって引くほどの女好きだし。それに基本はクズだし」
それがわかっていて好きになれるのが謎だ。俺が女なら絶対に魚住なんて選ばないのに、彼女の目には魚住しか入らない。
「魚ちゃん、大学生はOKなんだって。あと2年もすれば私だって大学生なのに。たった2年なのに……その2年があるだけで、私は絶対に魚ちゃんの恋愛対象には入れてもらえない」
ゆっくりと前に進みながら、それよりもゆっくりと彼女は続ける。
「わかってるんだけどね。追いかければ追いかけるほど嫌がられるって。魚ちゃんは女癖が悪くて、軽い付き合いしかしないから」
「そこまでわかってて、よく好きでいられるよな。もっと他にも良い奴いると思うけど」
俺が言ったのは諦めさせる為の言葉ではなく、俺の本音だ。本心から魚住なんてやめてしまえと思っている。
でも彼女はやっぱり首を縦には振らなかった。
「私の今の1番は魚ちゃん。明日は違う人を好きになるかもしれないけど、今のところは魚ちゃん」
「なぁ、こういうの聞くのはどうかと思うけど、あいつの何がいいの?」
「それがわかんないんだよねぇ……。私が知ってる魚ちゃんは女好きですぐ嘘をついて、そんなにイケメンでもないくせにイケメンぶってて、暇があれば女の子を追いかけてるってことだけだし」
「それ、ほぼ悪いところだけど。ほぼってか全部」
俺と彼女の魚住に対するイメージは同じだ。それなのに、俺と彼女が魚住に抱く感情は全く違う。
彼女の話を聞けば聞くほど、魚住の好感度は下がる。世間体を考えてとかではなく、彼女のことを思えば魚住なんてやめた方が絶対にいい。
それなのに、どうしても諦められないと言うから彼女の気持ちは『本物』なんだろう。短所も知った上でこんなに想ってくれる子から逃げる魚住は、やっぱり最低な男だ。
「聞けば聞くほど、なんで魚住が良いのかわかんなくなった」
気を遣うこともなく言った俺に、女子高生は「私も」と同感した。けれどその後には「でも好きなんだよ」と続いた。
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