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94.用法容量は守れない
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珍しく自分から求めたところで、ああ見えて実は真面目なリカちゃんが頷くとは思っていなかった。体調が戻ってからだとか、今日はやめて明日にしようって言われると思っていた。
でも、リカちゃんは真面目でもあるけれど欲求にも弱い。日頃から慧君慧君うるさいだけあって、こっちから誘えば一発だ。
その証拠に、リカちゃんはベッドの上に乗り上げてきやがった。
「リカちゃん、したいって言ったのは俺だけど……俺だけど、だな。できれば話を聞いてもらえると嬉しい」
じりじりと迫ってくるリカちゃんの身体を、俺は押し退けようとした。けれど伸ばした手は簡単に捉えられ、それは首に回すよう誘導されただけ。
「慧君、男に二言はあっちゃ駄目だと俺は思う」
「それは俺も賛成だけど……でもほら、人間なんだし、こう……気の迷いってやつもあるし」
「大丈夫。慧君が迷ったら、俺が目的地まで手を繋いで案内してあげるから」
「ああ……うん。それはすっげぇ安心だな」
極度の方向音痴のリカちゃんに、案内なんてできるわけがないけれど。でも、これはただのたとえ話だから、そう言いくるめられてしまえば簡単に終わる。
諦めてその首に回した腕。俺の手の甲にリカちゃんの髪が触れる。それが少し湿っているのは、きっとシャワーを浴びたからだ。
その理由は言われなくてもわかってる。
「あ、そうだ!口だ!俺、口を洗いたいんだけどっ」
まだうがいをしていなかったことを思い出し、言ってみる。けれどリカちゃんは俺の上から退こうとはせず、にっこりと笑った。
「リカちゃん、俺の話聞いてた?」
「もちろん。俺が慧君の声を聞き逃すとでも?」
「……いや、思わないけど」
「でしょ。あ、ちなみに慧君は口どころか顔も洗ってあるよ」
一体どういうことだと訊ねれば、俺は途中で一瞬だけ意識を取り戻し、うわ言のように「洗いたい」とくり返したらしい。それを理解してくれたリカちゃんが、俺を支えて顔と口を洗うのを手伝ってくれた……らしい。
我ながら、そこは譲れなかった自分に驚く。
「と、言うわけで。もう何も問題ないんだから、先に進んでもいいよな?」
着替えさせてくれたTシャツの裾から、リカちゃんの手が入ってくる。いつもなら待てって言いたくなるのに、今だけは全てを受け入れたかった。
ううん。受け入れるんじゃなく、自分から行動したい。。
「リカちゃん、キスしたい」
「もちろん」
ちゅ、ちゅ。それは軽く触れ合ってから深まって。舌と舌が絡んで、どちらからともなく唾液を送り合う。
水音が途切れる隙もなく、啄んでは離れ、合わさっては相手の中に入って。
キスってこんなに気持ちいいんだって、改めて思った。キスだけでなく、好きな人に触れるのって気持ちいい。
心がふわふわして、でも胸はぎゅっとなる。
頭がじんじんして、けれど身体は物足りないって叫ぶ。
もっと。
もっともっと、もっと欲しい。
もっと欲しくなって、もっと欲しいと言ってもらいたい。
「リカちゃ、んっ、あ……ふ、ぁ」
リカちゃんの唇が離れて、とろりと透明の糸が伝う。それが切れるのが悲しくて、俺は頭を上げてまた唇に吸いついた。
「やだ、もっと。ずっと」
たとえば、1時間キスを続けたら唇が溶けるってルールがあるとしよう。それでも今の俺は止まれないだろう。
溶けて、合わさって、どちらかが消えて、どちらかに吸収されて。本当にそうなったとしても、もう止められない。
ずっとずっと、触れ合っていたい。
「ンっ、ん……ふ、リカ、ちゃん」
必死に息を吸いながら、リカちゃんの舌を追いかける。俺のことを思ってゆっくり動いてくれているのはわかっていても、それじゃ足りないんだ。
「あ、んぅ」
「ああもう……やっばぁ……、このままじゃ慧君に食べられちゃいそう」
本当はそうしたいけれど。でも、そうしちゃったらもうリカちゃんに会えないし。もうリカちゃんに触れないし、リカちゃんに触ってもらえないし。
この先もできずに終わっちゃうし。それは困る。
だから仕方がなく口を離してやった。本当は本当は離したくなかったけど、寂しかったけれど。
そんな俺に気づいたのか、リカちゃんの指が俺のそれに絡む。お互いの指の合間に、相手の指。恋人繋ぎで、ぎゅっと力が込められた。
「いっぱい舐めてあげるから、これで我慢な」
ああもう、リカちゃんのバカ。
そんな甘ったるい瞳で、甘ったるい声で、甘ったるい雰囲気で。偉そうにお願いされたら、頷くしかできないじゃないか。
コクン、と首を縦に動かした俺を見て、リカちゃんが優しい声で言うには……。
「聞き分けの良い慧君も、すごく好き」
ダメだ。リカちゃんの過剰摂取で、今度こそ死んじゃうかもしれない。
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