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133.恋する男心
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「自分には甘く他人には厳しい蛇光さんに、見た目を褒めて貰えるなんて光栄ですね」
苦虫を噛み潰したような顔をする彼女に微笑むと、その表情がより険しく崩れる。
「思ってもいないくせに、よく言う。本当に、歪んだ性格してるんですね、獅子原さんって」
「それはお互い様じゃないですか?ああ、でも蛇光さんと同類にはなりたくないなぁ……」
「一緒にしないで欲しいのは、こっちの方。女を相手に暴言を吐くような男と同じだなんて、ありえない」
蛇光の口が歪に笑む。彼女の眇られた瞳には俺の顔がしっかりと映り、それは意地の悪さを全開にして笑っていた。
慧は俺のことを性悪だと言うけれど、最近は随分と丸くなったと思う。でも時々、こういった勘違いの甚だしいやつが現れると、昔の自分が頭を出す。
歯向かってきたなら打つまでだし、正面から噛みついてきたのなら、その牙を抜いてやりたくなる。そうして丸裸にされて、それでも立ち向かって来るなら少しは楽しめるのだけれど…………。
「女だ男だって、たかが2種類しかない性別にこだわるなんて、随分と古臭い考えだな。見た目は若作りしてても、根本が若くない」
「何であたしが、そこまで言われなきゃダメなわけ?」
「ここまで言わなれきゃ理解できないからだろ。恨むなら自分の頭の悪さを恨め。無駄なことに働かせる頭があるなら、道徳のお勉強からやり直した方がいいんじゃないか?」
「あたっ、あたしは頭なんて悪くないし!そもそも若作りなんてしてない!ありのままのあたしが、今のあたしなんだから!」
必死になって自分を守ろうとする女に、気持ちが萎える。ちっとも鬱憤を晴らすことに役立たず、こうして蛇光と接する時間が、何よりも無意味なものに思えた。
「あー……今までの全てが無駄な時間だった。慧君に言い寄ったかと思えば、簡単に俺に乗り換えるし。ちょっと優しくしただけで勘違いして、笑えるぐらい暴走するし。慧君は他人に優しいから、限界まで何も言わないし。でももう、それもどうでもいい」
「調子に乗らないで。あたしが誘った時、そっちだって楽しそうにしてたじゃない。下心丸出しの顔して、笑ってたくせに」
「下心?へぇ……今まででダントツに騙されやすく、嘘に引っかかりやすい女だと笑ったのを、お前は下心だと捉えたのか?その目、ちゃんと見えてるか?」
「……ッ、そんなの強がりでしょ。絶対にその気があったくせに!」
どこまでも自分の負けを認めず、勝ちにこだわる蛇光を凝視する。そもそも、こちらは何も勝負なんてしているつもりは無いのに、この女は誰と戦っているのだろう。
誰に負けたくなくて、どこで1番になりたいのだろう。そう問えば返ってくるのは、きっと「誰にも負けたくない。全てで1番になりたい」だろう。
あらゆることの頂点に立ちたい人。俺の愛しくてやまない彼とは正反対の、狡猾で傲慢な人。
高みから見下していたいのなら、その辺の山にでも登って二度と降りてくるなと思う。けれどきっと、この女は這いつくばってでも再び誰かの目の前に現れるだろう。
何事もなかったように笑って、また今回と同じように周囲を乱す。そんな人の幸せを壊すことを楽しむ性悪に向かい、俺は否定の意味を込めて首を振った。
「その気の欠片どころか、気を遣ってやったのも全部が嘘。お前を抱きかかえた時には、道端に投げ捨ててやろうかと思った」
憐れむ視線を、分かりやすく蛇光の腰の辺りに向ける。自身では細くて自慢なのかもしれないが、俺にとっては魅力なんて皆無の箇所を注視して言う。
「1つ、男心を教えてやろう。下心が見え見えな際どい下着なんて、好きでもない相手に見せつけられると気持ち悪いだけなんだよ。逆に好きな子なら、紐もレースも、トランクスにもそそられる」
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