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「俺待ってろって言ったよな?たった1時間も待てないなんてバカなのか?」
テーブルに置きっぱなしだったカップ麺の容器を見て獅子原が視線を鋭くした。
「腹減ったんだから仕方ないだろ。遅いお前が悪い」
我ながら滅茶苦茶な言い分だとは思う。が、食べてしまったものは仕方ない。
今さら出すことは出来ないんだから開き直ってやった。
それを黙って見る獅子原の視線が痛い。
少しの沈黙が流れ、諦めたように小さく息を吐いた獅子原がテーブルの上に何かを広げていく。
「せっかくだから少しだけでも食えよ」
テーブルの上にドンと置かれた料理。
待ってろと言って消えた獅子原は、紙袋を片手に戻って来た。
その袋の中から取り出したのは様々な大きさのタッパーだった。
「ってかさ、家に皿も無いってどんな生活してんのお前」
「必要無いモン置いてても無駄だから」
タッパーのまま並べられた料理を見て獅子原がため息を吐く。
辛うじてあった割り箸を手に取るその目は、呆れを通り越して何を考えてるのかわからない。
「そういや聞くの忘れてたけど、お前コンソメ派?それともトマト派?」
「は?」
なんだコンソメ派、トマト派って。
アレか。ポテチの味か?
それなら……
「塩」
「は?」
違った。
明らかにお前何言ってんだ?という顔で獅子原が俺を見る。
「ロールキャベツの話なんだけど。コンソメで煮てるからトマト派ならケチャップかけろよ」
あぁ……なるほど、と納得して気づく。
「これ、お前が作ったのか?」
「お前ってなぁ……年上を敬えよ」
「んじゃ獅子原」
「先生を付けろバカ」
「うぜぇな…………って、え⁈」
そこで俺が見たもの。それはテーブルの横に立つ獅子原が履いている靴下。
「お前っ……それマジか!」
獅子原は、とてもとても可愛らしい黒猫の靴下を履いていた。
「ぷはっ…!おま、その顔して…っ、ね、猫とか」
「うっせぇ。教師なんてクソ真面目な仕事してっと靴下ぐらいしか自己主張できねぇんだよ」
「だからってソレは無ぇわ」
色気垂れ流しの顔して黒猫の靴下とかネタか。
そういや…今日の姿も学校で見た時と全然違う。
着てるパーカーは黒なんだけど中に着ているのは薄いピンク色のシャツ。下は細身のジーンズ。
こうして見ると本当に大学生みたいだ。
「靴下といい服といい教師っぽく無ぇな」
「バーカ。私生活まで格好つけてたら疲れんだろ。
それより冷めないうちに食べるぞ。早く座れよ」
いや…偉そうにしてっけど、ここ俺ん家な。
言えばまた面倒くさそうなので黙って席につく。
すると前の席に獅子原が座る。
歩と拓海以外の誰かと一緒に飯を食うなんていつぶりだろうか。
目の前の獅子原と目が合って、その視線から逃れるよう顔をそらせた。
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