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「HRいいのか?」
「…………飽きた」
「ふぅん」
それ以上何も聞かない。
拓海と違って歩は余計な事は聞かないし言わない。
そんなヤツだ。
そんなヤツだったはずなのに。
「アイツとなんかあった?」
一瞬時間が止まるかと思った。
「…アイツ?誰のこと言ってんだよ」
意味がわからないフリをする。
けれどそれは、すぐに無駄に終わった。
「獅子原」
「なん、で…」
「見てりゃわかる。
お前がアイツのこと好きなの」
軽く笑った歩がタバコに火を点けた。
身体が反応する。
「この匂い……」
「へぇ。さすが嗅ぎ慣れてるだけあるな。
そんなウットリした顔して…そんなにこの匂い好き?
あぁ、違うか…大好きなアイツの匂いだからか」
その手にあるのは、リカちゃんと同じ銘柄のタバコ。
「なぁ。アイツのこと、フったの?」
歩の真剣な目が俺を捉える。
「……俺がフラれたんだよ」
驚いたように目を見開き、その手から灰がポトリと落ちた。
「そこまで驚くことか…?」
「いや、そんなワケない。だって、え…マジで?」
珍しく戸惑う歩に俺の方が聞きたい。
なんでそんなに驚くのか。
「悪いか。そんなワケあるんだよ」
「いや、待って。だって誕生日の前日、わざわざお前の予定聞きに来たんだけど」
「…………は?」
言葉の意味が理解できずに固まる。
「土曜日にわざわざ来て人が寝てんの叩き起こしてまで聞き出してきたんだけど。
朝方まで起きてたのに容赦ねぇんだよアイツ」
「え、なんの話?」
どういう事か全くわからない。
わからなすぎて、もうどうしよう。
歩がタバコを揉み消し、俺を見る。
黒い2つの瞳が俺を映す。
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