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*
目覚めた時。
俺は自分のベッドの上にいた。
時計を見れば11時。…それも昼のだ。
「どんだけ寝たんだよ…」
昨日から寝てばっかりだ。
そこまでして俺の頭は機能したくないらしい。
「頭割れそう」
リビングのテーブルに置きっぱなしのスマホが未読メッセージを告げている。
けれどそれよりも気になるのは、その隣にあるもの。
『今日は体調不良で休み』
たった一行だけ書かれたメモ。
筆圧の低い綺麗な文字で書かれた紙切れを手に取る。
その隣にはカットされたオレンジにイチゴ、ラップのかかったホットケーキまで置いてある。
甘党の俺が好きな食べ物ばかり。
そういえば初めてリカちゃんが作ってくれた朝食もホットケーキだった。
まだ数日前の事なのに、遠い記憶のように感じる。
メールじゃなく直接ここへ来てくれた事が嬉しかった。
この場所にまたリカちゃんがいた。
それだけの事なのに、何とも言えない…温かい気持ちになる。
桃ちゃんは昨日のことをリカちゃんに話したんだろうか。
鷹野の話を言った記憶はないけれど泣きじゃくって気づかないうちに零したかもしれない。
そう思い、急いで歩に電話を掛けた。
『サボリ魔。何の用?』
のんびりした歩の声が聞こえる。
「鷹野は?鷹野来てる?リカちゃんは?」
電話口の向こうで歩が「うるせぇ」と呟く声がした。
『鷹野も今日は休んでるけど。獅子原はいつも通りすっげぇ偉そう』
「そう…なら、いい…けど」
不幸中の幸いってこの事だろうか。
肩の力が抜け、ソファに沈み込む。
『なぁ。お前やっぱ鷹野と何かあったんだろ?』
「別に。悪いけど寝るわ。じゃーな!」
歩が何か言いかけるのを途中で切る。
良かった…。
リカちゃんが鷹野に何か言う事も、鷹野がリカちゃんに何かする事もなくて。
けれど問題は解決していない。
……嫌でも明日はやって来る。
*
「おはよ。兎丸君」
目の前のその顔を殴り飛ばしたい。
それが出来ない苛立ちから握った拳に力が入る。
翌日の朝、教室に入った俺に真っ先に声をかけたのは鷹野だ。
「ちゃんと来たんだ?偉いねぇ」
「…………」
「え、無視?まぁそれも今のうちだけど」
コイツを爽やかだと思ってるやつらに見せてやりたい。
人の不幸を喜び、絶望に歓喜する顔を。
「また放課後にね」
鷹野が俺の元から自分の席に戻った。もうすぐHRが始まる。
「みんなおはよ……って、兎丸。もう体調はいいのか?」
「はい」
「そうか。辛くなったら言えよ」
普通の会話ですら泣きそうになる。
今日1日。俺はリカちゃんを見続ける。
もう明日から真っ直ぐ見れなくなるだろう。もしかしたら学校すら来れなくなるかもしれない。
廊下側の後ろから2番目。
笑いを噛み殺した鷹野が見つめるのは、教壇に立ち談笑しているリカちゃんだった。
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