アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
227
-
「…嫌、だ。嫌だ、嫌だ、嫌だ!!」
両手で顔を押さえ、首を振って嫌だと繰り返す。
こんな子供じみた行為しかできない自分が悔しい。
「慧」
後ろから聞こえた声がもっと近くなった。
それと同時に俺は温かなぬくもりに包み込まれる。
「俺の話を聞け。後で好きなだけ啼かせてやるから」
俺の両手を握ったリカちゃんが至近距離で俺を見つめる。
「別に全部同じじゃなくていいだろ。
俺は、お前と並んで生きていきたい」
「………え?」
「言っただろ?わからないから知りたいって。
誰よりもお前を知って、誰よりも近くでずっとお前を支えたい」
隣に座ったリカちゃんが俺の腰を抱く。
コツン、と額と額を合わせ、目を伏せ続ける。
「たまには喧嘩したっていい。
嫌なことは嫌だって素直に言ってくれていい。
無理に俺に合わせて背伸びすんな」
触れたところから、じんわり溶けてゆくような…そんな感じがした。
冷たくなった身体が、今度はほんのり温かくなる。
幸せ…なんて何度もリカちゃんにもらったけれど、こんな風に沁み広がるような穏やかな感情は初めてだ。
「10歳も下の高校生に置いてかれないか不安で、格好つけてごまかしてるなんて情けないだろ」
「……今までと違うってこと?」
見上げるリカちゃんの瞳は真っ直ぐで、いつもみたいにからかってるわけでもなく嘘でもない。
大人だとか、先生だとか…そういうのを取っ払って…俺と同じ1人の人間なんだ。
「全部初めて。こんな面倒くさくて思い通りにならないことなんて嫌いな筈なのにな。
お前に嫌われないよう必死な自分がダサい」
その言葉で俺は気づいた。
リカちゃんが俺を子供扱いしてたんじゃない。
俺がリカちゃんに引け目を感じてたんだ。
やり場のない思いを1番大切な人にぶつけていただけだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
227 / 1234