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可愛げのない言葉とは裏腹に目の奥がツンとしだした。
「まだ泣くなよ。本番までとっとけ」
柔く微笑んだリカちゃんは俺の両頬をそっと包む。
「溺れ死ぬぐらい俺が愛してやる」
しっとりと重なる唇に、口には出せない想いを込めた。
「せっかくだから誓いの言葉でも言っとく?」
シーツに包まる俺を抱きしめていたリカちゃんが、そっと中に潜り込んできて唐突に言う。
「真っ白でウエディングドレスみたいだし」
煌びやかなドレスでもないし繊細な刺繍があるわけでもない。
「…俺は男なんだからドレスなんて着ねぇよ」
「あ、自分が着る側の自覚はあんだな」
「…………っくそ!!」
墓穴を掘って悔しがるのをクスクスと笑う。
「いいよ別に。ドレスだろうが裸だろうが、お前だったら俺はそれでいい」
他のヤツが言ったなら「キモい」って思うんだろう。
そんな言葉ですらリカちゃんなら自然に入ってくる。
「この先ずっと。
健やかなるときも 病めるときも 喜びのときも
悲しみのときも 富めるときも 貧しいときも
愛し 敬い 慰め 助け
この命ある限り 真心を尽くすことを誓うよ」
あまりにもスラスラと出てきた台詞。
「……なんでそんなの覚えてんだよ」
「こんなの男の常識だろ?」
「そんな常識知らねぇよ」
真っ白な空間に映えるリカちゃんの黒い目。
全てを包み込むように甘く優しい、俺の好きな色。
「一世一代の台詞言わせたんだから覚悟してろよ」
「…勝手に言ってろ」
やっぱりやっぱりやっぱり。
可愛い言葉も気の利いた言葉も言えないけれど。
Yesの意味を込めてその頬にキスをする。
小さく笑ったリカちゃん。
「今日からお前は俺の生徒で恋人で婚約者な」
欲張りな恋人が本当に欲しがったのは、予想通り俺自身だった。
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