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「そんな顔しないで」
そんな顔ってどんな顔だろう。
俺は今、どんな顔をしてるんだろう。
「あーあ…これじゃリカに怒られちゃうわ。せっかく気を利かせて協力してくれたのに」
大浴場には行かないと言っていたリカちゃん。
あの時の理由は、きっとこれだったんだろう。
桃ちゃんの肩にある傷痕。
綺麗な白い肌に似合わない。
理由を聞いていいんだろうか。
俺がそれを知っていいんだろうか。
「……変なもの見せてごめんなさいね」
傷を隠すように手で覆い、桃ちゃんが謝る。
いつもと同じように笑っているのに壁を感じた。
これ以上触れないでくれと言われた気がする。
「昨日のリカちゃん、本当困ったよね」
「え?…えぇ。お酒弱いくせに調子乗るから…」
敢えて触れない俺に戸惑いながらも、その表情は安堵を浮かべている。
きっと俺にこの人は受け止められない。
ううん。この人が求めているのは俺じゃない。
「俺、桃ちゃんのこと好きだよ。だから何も聞かない」
悲しげだったのが安堵を浮かべる。
俺は自分の選択が正しかったのだと内心ホッとした。
「……リカが選んだのがウサギちゃんで良かったわ」
俺がリカちゃんに守られているみたいに、誰か桃ちゃんを守ってあげてほしい。
靄の向こうで笑う桃ちゃんがとても儚くて、今にも消えてしまいそうで胸が苦しくなった。
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