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「いいと思うよ、それで」
立ち上がったリカちゃんが、俺の頭を自分の腹に当てるように抱え込んだ。ゆっくりと背中を撫でてくれる。
「お前は桃のバカに笑ってやればいいよ。
ああ見えて桃だって考えてんだ」
トクトクと伝わってくる鼓動が心地いい。
ここが外じゃなければ抱きついてたかもしれない。
全部を語らないながらも、安心感を与えてくれる。
背中の手が首元に移動し、浴衣の襟を引かれた。
「なに?」
「浴衣、崩れてるから。お前脱ぐのは上手いけど着るのは下手だな」
…ムードをぶっ壊すのは健在か。
「別に浴衣なんか着れなくても生きていける」
「それはそうだけど。まぁこれからは俺が着せてやるからいいか」
「……そんなんも出来んのかよ。」
「これぐらい常識だろ?なんなら着物も着付けてやるよ。
ちなみに脱がせるのも俺だけどな」
最後の一言は余計だと思うが、また1つリカちゃんのことを知れたから黙っててやろう。
「………それより気にくわないのは、だ」
身を屈めたリカちゃんの声が近くなる。
目前に迫るその整いすぎた顔の迫力に、思わず仰け反りそうになる身体を許してはくれない。
「俺には好きとか滅多に言わねぇくせに」
「いや…それは好きの意味が違うっつーか…」
「は?そんなの知るか。どんな意味でもお前の好きは俺だけのもんだろ」
「……………お前はガキか」
半分…いや8割は本気で言ってるリカちゃんに呆れる。
こうやって俺に気を遣わせない器用すぎる励まし方。
リカちゃんらしいなぁ……と思った。
「リカちゃん、ありがと」
「急にデレんなよ。ここで襲うぞバカウサギ」
『好き』という気持ちを比率で分けるとするなら、きっと100%全てリカちゃんにいってしまう。
全部渡したとしても足りない。
このもどかしい思いをぶつけるように、俺はその身体に強く抱きついた。
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