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「たっくーん……。お願い!!」
「え?俺?!」
桃ちゃんの愚痴を聞くのは歩の役目だったはずだ。
仕方ないと苦笑いしながらも付き合っているのをよく見ていたのに。
「別にいいけど…」
拓海も変だと思ったのか、その視線が歩に向く。
見られている本人は素知らぬ顔でタバコを吸っていた。
「ごめんなさいね!今度何かご馳走するから」
「全然!!車まで運ぶだけだし大丈夫!」
ニコニコと笑う桃ちゃんは特に変わったところは無く、たまたま拓海に頼んだだけなのかもしれない。
「そろそろチェックアウトの時間だ」
鞄を持ち立ち上がる美馬さんの後にリカちゃんが続き、その後ろに桃ちゃんと拓海。
俺は、なかなか立ち上がらない歩に近寄った。
「おい、行くぞ」
「………」
「ほら歩!行くぞってば」
「なあ………時間ってなんで戻らないんだろ」
「は?」
「俺はお前が羨ましい」
歩らしくない言葉に、一瞬何を言っているのかわからなかった。
「まだ早いってわかってくせに目の当たりにするとやっぱキツい………情けねぇな」
立ち上がり出て行く歩の背中。
それを見つめる俺に、歩が振り返る。
「行かねぇの?それとも兄貴に迎えに来させる気?」
「行く……っつーかお前待ってたんだよ!」
何か俺の知らないところで何かあったんだろう。
桃ちゃんといい、歩といい……それにリカちゃんも変だ。
俺の知らない秘密がある。
いつか知る時が来るのだろうか。
みんなが変わっていく中、俺だけが取り残されていく気がして…それを振り払うように頭を振る。
けれど現実は待ってはくれないことを、俺はこの先知っていく。
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