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「お前は俺に多大なる感謝を示すべきだな」
車を走らせるリカが最初に言ったのは、何ともまぁ…リカらしい偉そうな言葉。
けれどそれは本当の事だから言い返せない。
「いつの間にそういう仲になったんだか」
「そういう仲って何よ…別にそんなんじゃないわ」
ヘビースモーカーのくせに、あまり感じさせないタバコの匂い。
ウサギちゃんの為になら何でもするリカが少し羨ましい。
そう。
あたしが羨ましかったのはウサギちゃんじゃなくリカ。
こんな風に誰か1人を愛し貫ける友人が羨ましかった。
「アイツのあの目…すっげぇ俺のこと睨んでたよなー。
いらない事言うなよって顔に書いてて笑えるわ」
「それなら何も言わないでちょうだい」
「俺としても複雑なんだよ。歩の気持ちもわかるし、お前の都合もわかる。別に口出しはしねぇよ」
そう言いながら今もうすでに口出ししてるのは誰だ。
「……どうしてあたしなのかしら。
だって歩ちゃんはノーマルでしょう」
男しか好きになれない自分とは違う。
今まで普通の恋愛をしてきたはずの彼が、どうして自分を好きだと思いだしたのか…わからない。
いつから?何がキッカケで?
一時的な気の迷いかもしれない。
兄と友人を見て、自分もそういう性癖なのだと思っているのかもしれない。
それぐらい男が男を好きになるなんて珍しい話だ。
「言っとくけど俺だって好きになった男はウサギだけだからな。今までがどうだとか関係ねぇだろ」
赤信号が近づき、車の速度を落としながらリカは言う。
「……あんたの場合は女も含めてでしょ。
今までどんだけ泣かせたきたと思ってんのよ」
「お前それ絶対に言うなよ」
その台詞から、今までが褒められた素行じゃない自覚はあるらしい。
リカのは恋愛遍歴なんてもんじゃない。
生活する中での暇つぶしみたいなものだった。
だからこそ今の状況は奇跡に近いと思う。
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