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「食べないんすか?」
先に昼ご飯を済まそうと歩ちゃんに連れてこられたのはラーメン屋。
デートでラーメン……それも初デートで。
「こういう時って普通はイタリアンとかじゃない?」
「そうなんすか?俺デートとかしたことあんまり無くて。
今度はイタリアン調べときます」
“今度”というフレーズも気になるけれど、それよりも信じがたいことを聞いてしまい、あたしはそっちに食いついた。
「デート…しないの?」
「今してんじゃないですか」
「じゃなくて!彼女とかいたでしょ?」
あぁ…と理解した歩ちゃんは水を一口飲んで、なんて事ない口調で続ける。
「面倒くさいから。ワケわかんねぇこと喋って、聞いてないと怒るし。そのくせ答えたら『そんなんじゃない』とか言われるし。じゃあ何だよって思っちゃって」
なんだかその場面が想像できる。
「否定したら怒るくせに肯定しても怒る。
俺に何求めてんだよって不思議で仕方ねぇ」
「あんた…想像と違うってフラれるタイプね」
「そうそれ。想像ってなんだよ…全部好きって言ったのは嘘かよってなりません?」
「なる、けど…女心わかってないわねぇ」
それはまぁ勿体ない。
黙ってたら人は寄ってくるのにそれを上手く使えない不器用な子。
兄とは違う…と言うよりは、まだその方法を知らないだけかもしれないけれど。
「別にいいですけどね」
運ばれてきたラーメンに視線を向けたままの歩ちゃんは無表情だけれど、声は優しい。
「自分の大切な人さえ俺のことわかってくれてれば。
他の誰に好かれるより好きな人に好かれたいんで」
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