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あたしの箸を持つ手が止まる。
ゆっくりと顔を上げた歩ちゃんは、そんなあたしを見て鼻で笑った。
「だからさぁ…食べないんすか?伸びますよ」
「たっ、食べるわよ!!」
顔をそらしラーメンに向き合うあたし。
歩ちゃんの視線はまだこちらに向いたままだ。
「なんでラーメン屋って聞きましたよね」
「え、あぁ…うん」
「お洒落なイタリアンとか桃さん行き慣れてるでしょ。
他人と同じことしてても、あんたの1番にはなれない。
だからですよ。俺が欲しいのは1番なんで」
……騒がしいラーメン屋でなんというキザな台詞。
この子は不器用でも立ち回るのが下手なわけでもない。
自分の事を誰よりも知っていて、それでいてあえて使わないだけ。
策士なのだ。それも兄と同じか…それ以上の。
「桃さん。……今のドキドキしちゃった?」
無視して必死にラーメンをすするあたしを見て笑う。
出されたラーメンが熱々で良かった。
じゃないと火照る顔をごまかせなかったから。
*
店を出て、この後はゲーセン?それともカラオケ?と思っていた。
今時の高校生なんて、どうせ騒がしいところが好きなんでしょう?
そう決めつけていたあたしを、歩ちゃんが連れてきたのはとても予想外な場所だった。
ガラス張りの建物。
静かに澄み切った空気。
「なんで植物園…?」
「騒がしいところ苦手だし。それに桃さん仕事で疲れてるから癒されるかなって」
誰だ。
この子をデート慣れしてないって思ったヤツ。
「こういう静かなところの方が俺を意識するでしょ?」
あぁ…あたしか。
「今日はのんびりデートしましょうね」
特に隣に立つこの子には用心しないといけない。
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