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「やだぁ!!綺麗ーっ!」
色とりどりの花に囲まれればテンションは上がる。
あたしは綺麗なものと可愛いものが好き。
特に花はいつも飾ってあるぐらい大好き。
それを知ってか知らずか…ううん、おそらく知っててここを選んだ歩ちゃんは抜け目がない。
植物園なんて、そんなに人が多いわけじゃない場所。
デートしたことが少ないって絶対に嘘だわ。
少し後ろを歩いているのも、さりげなく扉を押さえる仕草も…なにもかもが完璧だと思った。
「うわぁ……素敵」
植物園の一角にあるコーナー。
季節の花々が植えられている。
そこにはたくさんの紫陽花が咲き乱れ、幻想的な雰囲気を作り出していた。
「紫陽花、好きなんですか?」
すぐ近くに立っていた歩ちゃんが紫陽花を覗き込むあたしに話しかける。
「…好き。この淡い色が好き」
まるで溶けて無くなってしまいそうな色。
羨ましい。
「ふぅん。紫陽花って桃さんっぽいですよ。」
「そうかしら?よくヒマワリとか言われるけれど…」
「それ騒がしいからだけでしょ。
桃さんは紫陽花が似合う」
何を考えてるのかわからない瞳が、立ててある紫陽花の説明書きを映し、読んだ後あたしへ移動する。
そして、その瞳はゆっくりと細まり柔らかくなる。
「紫陽花の花言葉、辛抱強い愛情っていうんですね。
耐えて耐えて誰よりも綺麗な花を咲かせるのが桃さんっぽい」
ダメだ、それは反則。
まるで『頑張ってるの、俺は知ってますよ』とでも言いたげな言葉に縋ってしまいそうになる。
「………キザなこと言ってくれるじゃない」
「そこは素直って言ってくださいよ」
すぐに戻ってしまった無表情に、なんとか気を留めた。
正直、今のは危なかった……。
「でもまぁ……ありがたく受けとらせてもらうわ」
ツンと顔を背けるあたしを、歩ちゃんが背後から緩く抱きしめた。
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