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「慧ーっ!おはよー!!」
靴を履き替えたところで背中をバシンと強く叩かれた。
こんなことするのは、1人しか思い当たらない。
「拓海……痛ぇ」
「慧はひ弱だなぁ…もっと食わないと強くなれねぇぞ?」
「心配してくれなくてもお前よりはデカいから」
2人並んで階段を登っていると後ろから「はよ」とかけられた声。
振り返った先にいたのは歩だった。
「歩がギリギリじゃなく来た!」
駆け寄る拓海に歩は視線だけを向ける。
「てめぇは朝から煩いのな…」
「今日は6時起きで七海の弁当作ったからな!
ついでに自分のも作ったから分けてやるよ!」
ニッと笑い、持っていた紙袋を得意げに持ち上げる。
「自分のがついでかよ。まぁ楽しみにしてる」
楽しみだと言う割に無表情な歩が拓海から俺に視線を移し、すぐにそらす。
「なんだよ?」
「別に……あ、兄貴」
「え、どこ?」
踊り場の窓から外を見た歩がそう言うから、つい俺は身を乗り出してしまった。
けれども、そこにリカちゃんの姿はない。
「いないじゃねぇかよ」
「俺が見た時はいたんだって」
「嘘だ。俺がリカちゃんを見逃すわけない」
左手で目元を押さえた歩が「はぁ」と溜め息をつく。
「朝から惚気てんじゃねぇよ」
「は?惚気?そんなんするわけねぇだろ」
「……お前まで無自覚か。このバカップル」
その言い草にイラッとして歩の太ももを蹴る。
痛ぇ…と言った歩が庇ったのは、なぜか腹だった。
「腹、下してんのか?」
少しだけ心配すれば、返ってくるのは
「てめぇと一緒にすんな。あぁ…兄貴が丁寧に処理してくれるから大丈夫か」
……クソ。心配して損した。
ニヤニヤしている歩を無視した俺は、拓海の襟を掴み、引きずりながら教室へ向かってやった。
「……あれが羨ましいとか…ハードル高ぇな」
歩の独り言。
たまたまそれを聞いてしまった生徒は首を傾げ、目が合った歩がかけた「なに?」と言う言葉に慌てて首を振った。
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