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「だいたい詰めが甘いんだよ。
格好付けんなら最後までやり通せ」
「……まさか殴ってまで逃げるとは思わねぇだろ。
そんなに嫌がってた風には見えなかったのに…」
ボソボソと小声で言い返してくる。
昨日、歩とデートに出かけた桃は途中で逃げ出したらしい。
いきなりかかってきた電話で興奮しながら話すアイツに俺は何度も切りたくなった。
けれど、それを耐えたのは…こうして弟が悩むだろう事を予測できたから。
好きだと言った直後に殴られ、その上逃げられるなんて災難だと思う。
「オカマ界での照れ隠しだから気にすんな」
「そんなわけあるか。人がせっかくストレートに褒めてやったのに…あの人の行動が理解できねぇよ」
相手は桃だから殴ったと言っても大した力ではないだろう。
それよりもその行動にショックを受けたらしい歩。
「羞恥プレイはまだ早かったって事だろ。
あぁ見えて桃は照れ屋だからな」
「他人にはズケズケ言うくせに。あー……もうどうしろって言うんだよ…マジわかんねぇ」
本気で悩んでる様子で、顔を覆い俯く。
今回ばかりは歩が可哀想で仕方ない。
「まぁ悪くはないんじゃねぇの。
今頃あのオカマ、お前の事で頭一杯だろうしな」
さすがに仕事に支障をきたしてるとは考えられないが、少なくとも度々思い出してはいるだろう。
でもってその度に奇声を発してるのも想像がつく。
「あんなオカマ1人落とせないでどうする」
だなんて偉そうに言ってみたけれど…なかなか前途多難な歩の恋。
何かきっかけがあればいいのに。
そうでもないと頑固なオカマは変わらない。
何か……たとえ多少傷付いたとしてもいい。
アイツが前を向けるように変われたのなら傷は癒せる。
そして、それはこいつなら出来るはずだ。
目の前で悔しそうに拗ねる弟を俺は信じている。
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