アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
356
-
デートの日、素直に好きだと言った俺に桃さんは喜ぶでも怒るでもなく俯き黙った。
自分でもやり過ぎた自覚はある。
けれど強引に攻めると決めたからには止まれなかった。
俯き肩を震わせた彼が心配になってそっと近づけば、何やら奇声を発して腹を殴られる。
咄嗟の痛みに驚き蹲った俺を置いて彼は逃げ去った。
まさか……あんなはずじゃなかったのに。
多少は照れて文句言われるのは覚悟してた。
まさか逃げるという手段を選ぶとは思わなかったけど。
我ながら完璧なデートだったはずなのに。
きっと桃さんの予想してたものを裏切って印象に残るデートが出来ただろう。
…不服ながら最後の結末も印象には残っているだろう。
「あのオカマ…今度会ったら覚えとけよ」
兄貴の元から教室へ戻れば、そこでは爆睡している慧とクラスのやつらと騒いでいる拓海がいる。
その輪に入る気にはなれず俺は自分の席に座った。
取り出したスマホには着信はおろかLINEすら来ていない。
「チッ…連絡ぐらい寄越せよ」
頭に浮かぶ顔に文句を言えば、かけられる声。
「珍し。歩がケータイチェックしてる」
背中に感じた重みに振り返る。
そこには俺にのっかかって笑う拓海がいた。
「あ?お前向こういなかったっけ?」
「んー。歩戻ってきたからもういい。
それより誰からの連絡待ち?」
「別に待ってねぇし」
ふぅん…と気にしてんだか、してないんだか微妙な返事をした拓海は背中から降り俺の前の席に回った。
「なんだよ」
ジーッと見てくる大きな目。
少しつり目がちで、まつげは少し短め。
それがふっと緩んで次には晴れ渡るように笑う。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
356 / 1234