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「駅までだからね?!」
「はいはい」
「絶対に絶対に駅までだからね?!」
桃さんが作ってくれた晩飯を食べ、送る送らないで揉めた俺たち。
最終的にやっぱり強引に俺が押し切った形になった。
駅までだと何回も繰り返す桃さん。
必死で置こうとしてる距離が…まぁウケる。
「俺は1秒でも長く一緒にいたいんですけどね」
「っ!本当にリカの弟ね…そんなこと言う子だとは思わなかったわ」
「我ながらそれな。まぁ恋は盲目ってことで」
何開き直ってんのよ、と笑う桃さんは月に照らされ綺麗だ。男とか女とかじゃなく人として綺麗だと思った。
夏は人を狂わせ本能を呼び覚ます。
少し前を歩いていた桃さんの手を握った。
「え?!何して…」
驚いたように振り返った桃さんは言葉途中で止まる。
強く、強く握った手は絶対に解きたくない。
建物の影に身を寄せ息を潜めた。
「歩ちゃ……んっ!」
初めて感じた桃さんの唇は柔らかく外気よりも冷たく意外にも硬い。
……いや、硬いと言うより骨みたいだ。
俺の記憶が確かなら唇には骨はないはず。
目を開ければ俺と桃さんを隔てるソレが見えた。
「………手、邪魔なんすけど」
咄嗟に手で唇を覆った桃さんと目が合う。
「手があったらキス出来ない」
その手を退けようと手首を掴む俺と、必死で顔を離そうともがく桃さん。
力が均衡して決着がつかない。
「…この…っ強情!!」
「いい加減諦めてくださいよ」
「諦めるかっ!離せ…!」
これ以上力を込めれば細い桃さんの腕を痛めつけてしまいそうだ。
諦めて力を抜けば、桃さんは俺から距離を取って睨みつけてくる。
「それ以上何かしたら叫けぶわよ!」
「その場合あんたの方が困るでしょ。
もうしませんよ…今はね」
さすがに叫ばれるのは面倒臭くて諦めて元の道へ戻ろうと歩き出す。
すると素直についてくる桃さん。
だからさぁ……押しに弱すぎだって言ったじゃん。
足をいきなり止める。すると予想通り、桃さんは俺の背中にぶつかる。
「ちょっ、いきなり止ま…」
今度は隠す隙なんて与えないように素早く唇を合わせた。
触れるだけ…まだ、俺のものじゃないから我慢しなきゃいけない。
軽く合わさっただけのキスが終わる。
桃さんが戸惑った顔を鋭くさせた。
「しないって言ったじゃない!」
「今はって言ったでしょ。1秒前は過去ですよ」
「また屁理屈!!!」
ぷんぷん怒りながらも少し離れて並んで歩いてくれる…本当に俺を振り回す人だ。
掴めなくて、でも離れてはくれない。
こうやってどんどんハマっていくんだろう。
「頑固なオカマ」
「あたしは純粋なの!!簡単に落ちないんだからね!」
「っつーかオカマは否定しねぇのかよ」
「あっ!!!!」
くだらない話をしながら夜の道を2人で歩く。
確実にこの人は俺の方を向いてきている。
そんな自信が溢れていた。
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