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学校まであと少しのところにある公園。
その入り口近くに、しゃがみこんでいた人物。
「お前そんなとこで何してんの?」
だいぶ下にある大きな目が俺を映し、ニッと笑った。
「歩、昨日あんまり寝てないだろ?顔が死んでる」
「……お前に関係ないだろ」
通学路が違う拓海は、この公園を通るはずない。
それなのに、どうしてここに?
「今日も機嫌悪いのかよぉ…。
昨日せっかく俺が癒してやったのに」
朝っぱらから絡んでくる拓海に正直イラッとした。
いきなり現れて人の気持ちも考えないでヘラヘラ笑いやがって。
こんなの八つ当たりだってわかってるのに。
拓海は何も悪くないって頭ではわかってる。
様子がおかしかった俺を心配してくれてるんだって。
全部わかってるのに……止められない。
「いきなり現れてウザいんだよお前。
お前の家から学校行くならここ通らないだろ。
なに?いつもの仕返しに俺をからかいに来たつもりか?
ハッ…わざわざ来たのに残念だけど、お前なんかに何言われても平気だから」
早口でまくし立てれば俺を見上げていた拓海の笑みが消える。
訪れた沈黙によって雰囲気は最悪になり、益々自分が嫌になりそうだった。
「歩ってさぁ…結構子どもっぽいよな」
のっそりとした動きで拓海が立ち上がり俺を見る。
10センチは低い位置にある2つの目に映る俺は、ひどい顔をしているんだろう。
関係ないやつに当たって、そのくせ謝れずに黙って。
拓海が「ごめんごめん」とか言って受け流してくれればいい…なんて考えてるんだから。
「歩」
俺を呼んだ拓海の身体が後ろに傾き、勢いよく向かってくる。それはスローモーションのようだった。
「痛ってぇ!!!」
ジンジンと痛む肩。
その小さい身体のどこに秘めてたんだってぐらい強い力で殴られた。
「痛ぇな!!お前マジ何がしたいんだよ?!」
「それは俺の心の痛みだバカ!」
「…はぁ?!」
拓海から全く理解できない言葉が出て、俺の動きが止まる。
「なぁ。なんで桃ちゃんのこと俺に言ってくんねぇの?」
「お前…なんで」
なんで知ってるのか?そう問いかける俺に拓海は目を伏せ笑った。
いつも騒がしくて、いつもバカばっかりしてる拓海とは違う少し大人びた表情。
「中1ん時のマキちゃん」
「あ?」
それは俺が初めて付き合った子。
「それにユイちゃん…あとヒカリちゃんにサエに……」
そのあとに挙げていく名前は全て俺の元カノってやつで。
拓海が何を思ってそれを口にするのかがわからない。
「お前何が言いたいんだよ」
「歩の女タラシ」
「は?」
「なんで無愛想で性格悪いくせに歩と慧がモテんだよ。
みんな俺の方が仲良かったのにさぁ…」
マジでわかんなくて仕方ない俺の横を通り過ぎ、拓海は歩き出す。
「え、なんなの?」
歩き出した拓海の背中が離れていき、少しして止まる。
ようやく俺を降り返った拓海の表情はやけに真剣で、それでいてとても柔らかい。
「今回は本気?」
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