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本気?と聞いた拓海は、俺の答えを聞かなくてもわかったらしい。
軽く俺を睨んでツンと顔をそらす。
「その反応は本気なんだ…」
拗ねたように頬を膨らませ、遊ばせた髪の毛先を弄りながら続ける。
「慧だけじゃなく歩までって…結局、俺1人になっちゃうじゃん」
「お前さっきから何言ってんの?」
膨らませたと思ったら今度は窄ませ口を尖らせる拓海。
「なんでずっと一緒にいたのにわかんねぇの?」
ジトッとした目。
拗ねた表情に思わせぶりな言葉。
「お前……まさか、俺のこと…」
この顔と仕草と雰囲気で思いつくのは1つだ。
ーお前まさか俺のこと好きなの?
聞いちゃいけない気がする言葉を言うか躊躇う。
それを聞いたらこの関係が崩れてしまう気がした。
「俺さ、なんでこんなモヤモヤすんのかずっと考えてて…で、わかったんだけど」
「………うん」
言うな。それ以上は言うな。
俺はお前と変な雰囲気になりたくねぇ。
お前と慧とはずっと友達でいたいんだよ。
お願いだから言わないで。
拓海の口が開き、言うなという願いは叩き落とされる。
「寂しい」
「…………………は?」
「慧も歩も俺のこと放ってくだろ?!
いっつも3人でいたのに寂しい」
予想外の台詞。
拓海が俺を好きになるわけないのに。
自意識過剰になって変な汗かいた自分が恥ずかしい。
「お前なに言ってんだよ。別に今までと変わらねぇし」
慧が兄貴とよく過ごすようになってから拓海と2人の時間が増えた。
最近は自分のことで一杯で、確かに拓海の話を聞いてなかった気もする。
「たまには俺のことも構えよっ!」
「たまには…って俺にはお前しかいないだろ」
「嘘だ!!桃ちゃんとラブラブなくせに!」
ラブラブ……
そんなんじゃない。そんなイイものじゃない。
まだまだ遠く、いくら手を伸ばしても届かない。
「アホか。遅刻するから行くぞ」
歩き出す俺の腕を掴んだ拓海が見上げてくる。
「行くぞって…」
「歩はさぁ」
目の前にいるのは拓海なのに少し違う。
「歩は俺の自慢なんだよ」
伏せた目から、いつもは隠れている睫毛が揺れているのがわかった。
「俺の自慢の友達は偉そうで意地悪だけど、自分に素直でカッコイイ。そんな歩が好きなんだ」
「なんなの、お前…」
「だからそんな顔すんなよ。
歩は歩の思った通りにしなきゃ歩じゃねぇよ?」
自分の幼さに嫌気がさし、自己嫌悪ばかり繰り返す中で拓海の真っ直ぐな目はとても痛く感じた。
それと同時に思う。
「俺もお前のこと自慢。カッコよくはねぇけどな」
「おい!」
「嘘だって。お前はすっげぇ男前だと思うよ」
まだ諦めちゃいけない。
まだやれる。
だってこんな俺にも味方がいる。
「俺が拓海のこと放っとくわけねぇだろ」
「っぁ……あゆむーっ!!」
「ほら急げって。遅刻したらあのドSが面倒くせぇ」
「歩と一緒なら怒られてもいいよ」
「……1人で怒られてろ、バーカ」
太陽よりも眩しい友人は白い歯を輝かせ、満面の笑みを俺に見せてくれた。
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